<高校野球宮城大会:仙台育英6-5柴田>◇7月31日◇決勝◇Kスタ宮城

 第95回全国高校野球選手権大会(8月8日開幕、甲子園)に出場する全49代表校が出そろった。宮城では仙台育英が柴田にサヨナラ勝ちし、2年連続24度目の甲子園出場を決めた。今秋ドラフト候補の上林誠知外野手(3年)が高校通算23本目となる右越えソロを放つなど3安打3打点と活躍し、0-5からの大逆転勝利を呼び込んだ

 普段はクールな上林が、ベンチに戻ると泣いていた。2点を追う8回、高めの甘い直球を右翼席に運んだ。1回に5点を奪われる苦しい展開だったが、予感があった。「守備についている時から、ホームランを打って1点差になると予想していた。野球で初めて泣いた」。

 感極まるほどの起死回生の1発は、大逆転勝利の呼び水になった。佐々木順一朗監督(53)が「しかしあそこで打つかねぇ。あれで勝てる雰囲気になった」と確信したとおり、2年連続24度目の甲子園出場を決めた。

 やはり、“持っている”。センバツで、ワンバウンドの球を安打にして脚光を浴びた上林。準々決勝まで14打数5安打2打点といまひとつだったものの、準決勝で夏の大会初アーチをかけて、きっかけをつかんだ。この日の5回2死満塁。「ここで打てなきゃ終わってしまう」と右翼線へ2点適時二塁打を放ち、2試合で5安打5打点と大暴れした。今日1日の誕生日を自ら祝うかのように、打ちまくった。

 苦難さえも、力に変えた。センバツ後、左足首を痛めた。約1カ月の離脱中、室内練習場の天井からつるされたロープを「レスキュー隊みたいに」登り、上半身を鍛えた。1日10往復こなし、体重は5キロ増えて80キロと一回り大きくなった。学校グラウンドの中堅125メートル、高さ約5メートルのボードを越えるほど飛距離もアップした。100メートル先の右翼フェンスは軽々越えてしまうため「危ないと苦情が来てしまった」と、“フルスイング禁止令”が出たほどだった。

 自身3度目の甲子園。対戦したい投手を聞かれ「(桐光学園)松井は負けてしまったので、(済美)安楽とやりたい」と157キロ右腕との対決を熱望した。埼玉出身なだけに「浦和学院に負けるわけにはいかない」と口調を強める。東北勢初の優勝を目指す過程で、センバツ優勝、準優勝校は避けて通れない相手。大旗の“白河の関越え”を達成するため、レベルアップした打撃でチームを勝利に導く。【今井恵太】

 ◆上林誠知(うえばやし・せいじ)1995年(平7)8月1日、さいたま市生まれ。小学1年から西堀A-Iで野球を始める。土合中では浦和シニアに所属、3年春に全国制覇。仙台育英では1年秋から4番。50メートル6秒0。家族は両親と兄、弟。184センチ、80キロ。右投げ左打ち。

 ◆仙台育英

 1905年(明38)創立の私立校。野球部は30年創部。部員114人。生徒数は2252人(女子743人)。駅伝は全国トップレベルでサッカー部、ラグビー部も強豪。主なOBはヤクルト由規。所在地は仙台市宮城野区宮城野2の4の1。加藤雄彦校長。◆Vへの足跡◆2回戦11-2塩釜3回戦7-3泉4回戦10-0石巻西準々決勝9-5大崎中央準決勝5-0聖和学園決勝6-5柴田