<全国高校野球選手権:日川4-2箕島>◇8日◇1回戦

 “山梨のダルビッシュ”が、2失点完投&1発で堂々の全国デビューだ。日川(山梨)の194センチ右腕、山田基樹投手(3年)が最速143キロの直球を軸に、春夏5度目の出場で、甲子園初勝利に導いた。山田の先制ソロを含め、打線が3本塁打を放ち、箕島(和歌山)との県立対決を制した。

 山田はいきなり“ダルビッシュ”の愛称を裏切った。1回表2死走者なし。4球目に投じられた内角の直球を「狙っていた」とフルスイング。打球は左翼スタンドへ突き刺さり、先制ソロ本塁打になった。194センチの長身とマウンドに上がる前の1発は日本ハム大谷のようだった。「打つと調子が良くなるんです」と話すように、投球もノッた。

 この日は最速143キロの直球を主体に4回2死まで無安打投球。5回から直球を狙われ長打を浴びると、スライダーやフォークを交え的を絞らせない。9回を6安打2失点6奪三振の好投で、日川史上初となる甲子園の白星をつかんだ。「日川の初勝利を目指してたんで、ホントうれしい。(失点は)3点までOKと思ってたんで気楽に投げられました」と豪快に笑った。

 笑顔と同じく夏までは投球も豪快だった。制球が悪く四死球で試合を壊すこともしばしば。7月に体重移動を意識しやすいように、腕を振りかぶらない投球フォームに変更した。また春の県大会からの秘密練習が制球に磨きをかけた。ホームベースから5メートル前に鉄枠を設置。その中にひもを4本縦横に張り、9分割したストライクゾーンを意識しての投球を週に150球程度行った。集中して投げ込むことで右打者のアウトローへの制球を磨いた。

 応援に訪れた父芳樹さん(47)は「制球が良くなった。本当によく投げている」と息子の活躍に目を細めた。バレーボール東レで活躍した父のDNAと長い日には1日12時間も寝る睡眠が194センチの体を作った。

 次戦は抽選で大阪桐蔭に決定した。連覇を狙う強豪を相手に「早くやりたい。自分の投球がどれだけ通用するか。森は今日2本本塁打を打ったので頭を使って勝負したい」と対戦が待ち切れない様子だ。「山梨のダルビッシュ」が春夏連覇校を連続撃破し、全国区になる日は近い。【島根純】

 ◆山田基樹(やまだ・もとき)1995年(平7)10月19日、静岡県三島市生まれ。御坂西小3年から野球を始め、中学は峡東リトルシニアでプレー。御坂中ではバレー部にも所属し県大会ベスト4。家族は両親と姉。父芳樹さんは身長190センチ。バレーボールの実業団・東レでプレーし、現在は日川の男子バレー部監督を務める。194センチ、88キロ。右投げ右打ち。

 ◆山梨県勢が1試合3発

 日川が3本塁打。山梨県勢のチーム1試合3本塁打以上は82年東海大甲府の杉村、花井、狩野が1回戦の境戦で放って以来、31年ぶり2度目。