<全国高校野球選手権:有田工5-4大垣日大>◇8日◇1回戦

 3度目の「がばい旋風」が始まった。創部114年目で初出場の有田工(佐賀)が、終盤に3点差を逆転し大垣日大を振り切った。1点を追う8回2死一、三塁から5番仙波康弥外野手(3年)が、逆転の2点適時二塁打を放った。94年佐賀商、07年佐賀北と佐賀県勢日本一2チームは、いずれも開幕試合に勝利し、そのまま頂点に立った。有田工もミラクルの法則でこのまま勢いに乗りそうだ。

 最後はエース古川侑利投手(3年)が、自己最速となる148キロ直球を外角へズバッと投げ込み見逃し三振を奪った。ガッツポーズし、叫んだ古川の声はアルプスからの大歓声にかき消された。「応援がすごかった。めちゃくちゃ鳥肌が立ちました」。校歌を高らかに歌い、大応援団と喜び合った。

 鮮やかな逆転勝ちだった。5回までに古川が3失点。打線は無安打で、県大会打率4割超えの3番藤川周遊撃手(3年)が肺気胸のため途中交代と劣勢だった。それでも植松幸嗣監督(35)は「相手は7回以降、球が浮く。とにかく粘りを見せろ、試合が動くから」と暗示のように鼓舞し続けた。

 言葉通り6回まで1安打に抑えていた大垣日大の先発高田航生投手(2年)は7回に球が浮き、3安打で2点を奪い降板させた。1点差の8回2死一、三塁からは、5番仙波が逆転2点適時二塁打。その直前、相手が4番古川を敬遠した。「予選では同じケースで打てなかったので初球から打とうと思った」と発奮した打球は左中間へグングン伸びた。

 仙波はチームで最も小柄な165センチ。だが、身長が止まった高校から筋肉トレーニングに励み、今ではベンチプレス105キロを挙げる。前日7日の練習でも柵越えを2発放った。チーム1、2位を争う怪力を、大一番で発揮した。

 アルプスには人口2万1000人の有田町からバス40台で4000人以上が駆けつけた。皿を持ち込めず伝統の皿踊りはできなかったが、タオルやメガホンで大騒ぎ。佐賀の祭りのかけ声「エンヤー」が飛び交った。

 祭りはこれからだ。94年佐賀商、07年佐賀北に続く開幕戦勝利から日本一へ。捕手の草野善彦(3年)は「(法則は)地元では有名な話。プレッシャーだけど」と笑った。次戦は14日。49代表最後に登場する常葉学園菊川(静岡)を破り、有田工ブームを巻き起こす。【石橋隆雄】