<全国高校野球選手権:前橋育英1-0岩国商>◇12日◇1回戦

 夏の甲子園に、新怪物候補が現れた。前橋育英(群馬)の最速148キロ右腕・高橋光成投手(2年)が、岩国商(山口)戦で、9者連続を含む13奪三振と衝撃デビューを飾った。昨夏10者連続三振を奪った桐光学園(神奈川)松井裕樹投手(3年)に次ぐ連続三振記録。最速145キロの直球とスライダー、フォークを織り交ぜ、5安打完封を決めた。スカウト陣の間では早くも来秋ドラフトは「西の安楽、東の高橋」の声が上がった。

 昨夏の桐光学園・松井の快投のようだった。左の174センチの松井に対して前橋育英・高橋光は右の188センチ。松井のようにガッツポーズはしない。ほえたりもしない。気温38度のマウンドで表情を変えずに投げた。だが、直球と同じ軌道から変化したスライダーは松井をほうふつさせた。

 象徴的だったのは6者連続三振で迎えた5回1死だ。フルカウントからの7球目、122キロの宝刀は鋭く落ちた。右打席の岩国商・中村はスライダーに跳び上がるように腰を引いた。スライダーへの意識を植えつけているから、打者は最速145キロをマークした直球にも手が出ない。6回無死。1ボール2ストライクからの4球目、142キロの直球が捕手・小川のミットにズバンと収まって見逃し三振。9者連続三振だ。

 松井が打ち立てた10者連続にあと1つで迎えた6回1死。岩国商・中川がセーフティーバントを試みて記録に並べなかった。「本当に楽しかった。自分でも信じられない」と笑いつつ「記録と知っていたら10個目を狙ったのに。バントが出来ないくらいのストレートを投げれば良かった。松井さんは去年見て、憧れていたんです」と悔しがった。

 奪三振を意識した群馬大会での1試合最多奪三振は9個で、ちょっと気落ちした。「三振10個を絶対取ります」と宣言して乗り込んだ甲子園。春の関東大会決勝で敗れた浦和学院に勝つという目標は達成できなくなったが、前夜、親交のある浦和学院のエース小島和哉投手(2年)から「浦学の分まで頑張って」と激励の連絡を受けていた。

 春夏通じて2度目の甲子園出場の前橋育英を初勝利に導き「サッカーだけじゃないところを見せられた」と言った高橋光。「今は安楽(済美)が中心となっているけど負けないくらい頑張りたい。対戦して勝てるようになる」と、力強く夏の主役へと名乗りを上げた。【島根純】

 ◆高橋光成(たかはし・こうな)1997年(平9)2月3日生まれ。群馬県沼田市出身。小学1年から利根ジュニアで野球を始め、投手と外野を兼任。中学からは投手に専念し利根中で市ベスト4。「こうな」という名前の由来は祖父光政さんの光という1文字と、「な」という字を入れたいという母尋美さんの願いから。幼稚園では他の園児から頭1つ分抜け出るほど成長が早く、小学校時代には毎晩牛乳を1リットル飲んでいた。好きな食べ物はミートソースのスパゲティ。50メートル6秒0。遠投90メートル。家族は両親と姉、弟。188センチ、82キロ。右投げ右打ち。血液型はB。