<全国高校野球選手権:日大山形7-1日大三>◇13日◇2回戦

 日大山形は4番奥村展征主将(3年)の先制2ランなどで優勝候補の日大三(西東京)を破った。

 27年前と同じ初戦の第1打席だった。1回2死三塁。日大山形の4番奥村は、日大三・大場の直球を逃さなかった。自身初の甲子園で最初のスイング。白球はグングン伸びて、バックスクリーン右に飛び込んだ。一昨年の覇者から先制の2ランに「手応えはあった。チームを勢いづけたかった」。ガッツポーズをして本塁にかえってきた父とは対照的に表情を崩さずホームを踏んだ。

 父伸一さん(45)は滋賀・甲西で甲子園に出場した。85年夏の準決勝でKKコンビ擁するPL学園(大阪)に敗れるも、準々決勝の東北(宮城)戦では佐々木主浩(元横浜)から3安打した左の好打者だった。翌86年の三沢商(青森)との開幕戦で大会第1号を放っている。27年の時を経ての“父子本塁打”に奥村は「(父は)ラッキーゾーンだったので」と少し誇らしげだった。

 社会人の強豪プリンスホテルでも主軸だった伸一さんの背中が、お手本だった。指導を受けた記憶はほとんどないが、バッティングセンターに行く時だけは違った。「『前に突っ込むな』と言われるくらいだけど、引きつけてすごい打球を打つ。それを見るのが一番勉強になった」。奥村は体が投手方向に突っ込みがちな振り子打法だが、この日もしっかりと球を呼び込んでアーチをかけた。

 奥村の1発を皮切りに、先発全員の12安打7得点。春の練習試合で6-8で敗れた優勝候補に、リベンジを果たした。1年春からレギュラーの大黒柱は「まだ次がある。チームの柱として、1戦必勝でやっていく」と目標の4強入りへ、打線を引っ張る。【今井恵太】

 ◆奥村展征(おくむら・のぶゆき)1995年(平7)5月26日、滋賀県甲西町(現湖南市)生まれ。小1年の時、三雲東スポーツ少年団で野球を始める。中学時代は草津リトルシニアパンサーズに所属。父伸一さんと日大山形・荒木監督が社会人野球プリンスホテルで一緒にプレーした縁で山形へ。1年春からレギュラーで今夏の山形大会では5試合で打率6割6分7厘(18打数12安打5打点)。177センチ、72キロ。右投げ左打ち。家族は両親、姉、妹、弟、祖父母。

 ◆甲子園の父子本塁打

 71年春に日大三・吉沢俊幸が坂出商戦、10年春に息子の日大三・吉沢翔吾が山形中央戦でマークしたのに次いで2組目。