<全国高校野球選手権:花巻東7-6済美>◇17日◇3回戦

 怪物の夏が、終わった。済美(愛媛)安楽智大投手(2年)が延長10回183球を投げ抜いたが、花巻東(岩手)に敗れた。10回に3ランを放ち、最速152キロで14三振を奪ったが、11安打で7失点。

 「1イニングでも、1アウトでも、3年生と一緒に野球がしたかった」。3年生とのことを振り返ると、安楽の目が涙で潤んだ。花巻東に1点差まで迫ったが、3回戦で姿を消した。

 この日も立ち上がりに苦しみ、11安打7失点と苦戦を強いられた。しかし、甲子園に「安楽智大」の名を刻み込んだ。「自分ができることは流れを変えること」と8回に3者三振。延長10回には最後の183球目に、この日最速の152キロで空振り三振に仕留めた。

 4番の一振りも見せた。10回裏無死一、二塁の好機に、真ん中に甘く入ったスライダーを見逃さなかった。打球は、外野手の足が止まるほど完璧な当たりで右中間スタンドへ着弾した。1点差に迫る特大弾で甲子園を沸かせた。

 小学生の時は、父晃一さん(52)と高校野球を見に甲子園に通った。父の実家が兵庫県。毎年必ず訪れる場所になっていた。1日4試合を朝から夕方までバックネット裏で見るのが安楽親子の定番。いつからか出場が夢になった。「甲子園を目指してこれまでやってきた」。14日の2回戦三重戦では甲子園球場での計測で最速タイの155キロをマーク。憧れの聖地に自らの記録を残した。

 4番でエース。センバツ準Vと結果を残し、注目を浴びるようになった。宇佐川主将は「安楽はプレッシャーを感じていると思うから、少しでも3年生たちが負担を軽くできたら」と話してきた。抑えようと気負う安楽に気付き、女房役の金子、宇佐川主将、一塁手の藤原がマウンドに駆け寄った。「甘えが出た。精神的に成長しないと」。反省の弁を述べた。

 次はチームを一身に背負う番だ。「調子が悪くても勝たせるのがエース。自分はまだまだエースではない。今度は笑って終われる夏に。また一からやり直したい」。安楽の高校野球は続く。剛腕は、また甲子園に戻ってくる。【宮崎えり子】