<全国高校野球選手権:延岡学園5-4富山第一>◇19日◇準々決勝

 延岡学園(宮崎)が延長11回、富山第一にサヨナラ勝ちし、県勢48年ぶり4強入りを果たした。同点の9回1死一、三塁の大ピンチで二ゴロ併殺に切り抜けたはずが、タイムがかかっており、やり直しに。それでも奈須怜斗投手(3年)が連続三振に切り抜けた。今日20日は休養日で、明日21日準決勝第2試合で、鳴門(徳島)を破った花巻東(岩手)と県勢初の決勝進出をかけ戦う。

 ビッグプレーは幻となった。同点の9回、1死一、三塁で延岡学園はエース横瀬から背番号「10」の奈須に継投。2ボールからの3球目、一、二塁間に抜けそうな打球を二塁手梶原がつかみ、反転し二塁へ転送。二-遊-一と渡り、間一髪で無失点で切り抜けた…はずだった。

 この時、延岡学園のブルペンで練習していた石川泰士郎投手(2年)の投球が左翼フェアゾーンに転がり、左翼線審がタイムをかけていた。球審は気づかずプレーを続行し併殺が完成したが、富山第一から抗議を受けノーカウントに。重本浩司監督(31)が「球審がジェスチャーをしないと全体のタイムにならないのでは」と抗議したが、やり直しは変わらなかった。

 しかし、ここからが見せ場だった。仕切り直しでマウンドに登った奈須が、2ボールからの再開で2者連続3球三振。1人目はスライダーで空振り、2人目は外角いっぱいに137キロの直球を決めた。「梶原のプレーをムダにしたくなかった。ここで抑えたらまたお立ち台だと楽しんでできました」と、2日連続のお立ち台で笑わせた。

 甲子園はここまで人を変えるのか。前日18日の3回戦、弘前学院聖愛戦で先発し8回0封した奈須は「あのマウンドだと打たれる気がしない。昨日抑えて、今までになかった自信がついた」と胸を張る。エース横瀬からバトンを受けるのは初めてのことだった。横瀬は「今まで周りをキョロキョロしていたのに、昨日から落ち着いているんです」、重本監督も「昨日の試合で完全に1本立ちした」とその変化を証言する。

 大会前まで「第3の男」だった奈須が、ラッキーボーイとなっている。「ここまで来たら宮崎に優勝旗を持って帰りたいです」。宮崎県は春夏通じ九州で唯一全国制覇がない。手堅い守りと積極走塁で、まずは県勢初の決勝進出を果たすつもりだ。【石橋隆雄】