<センバツ高校野球:組み合わせ抽選会>◇14日◇大阪・オーバルホール

 甲子園の神様のいたずらか。名将対決が、いきなり実現した。第86回選抜高校野球大会(21日から12日間・甲子園)の組み合わせ抽選会が14日、大阪市内で行われた。第4日第3試合で、智弁和歌山と明徳義塾(高知)が激突。智弁和歌山の高嶋仁監督(67)は甲子園歴代最多の春夏通算63勝。対して、明徳義塾の馬淵史郎監督(58)は同42勝。ともに優勝経験を持つ2人が、ぶつかることになった。

 笑顔の裏で既に闘志を燃やしていたかもしれない。智弁和歌山の高嶋監督と明徳義塾の馬淵監督が並んで座り、自然と始まった名将の対談。「誰や、こんないたずらをしたのは」(高嶋監督)。甲子園最多63勝指揮官は、隣に座った馬淵監督に目線を移した。さらに高嶋監督は「競った試合になったらいい。一方的になると自信をなくすので」。キャリアで上回るだけに、額面通りには受け取ることはできない。

 私生活では酒を酌み交わし、親交も深い。馬淵監督は「これから毎日一緒に飲みにいかなあかんくなる。甲子園に入ったら毎日電話しなあかん」。ジョークか揺さぶりか。一筋縄ではいかない2人の勝負師対談が続いた。

 高嶋監督は「馬淵さんはいやらしい監督。仕掛けてくるから、どれでこられても対応できるようにしなければ」。9歳上の先輩に持ち上げられた馬淵監督は、珍しく?

 終始たじたじ。馬淵監督は「ひっかけめいたことは、高嶋さんにはよう言いませんわ」と、やりにくそうな様子だ。

 名将ゆえに、複雑な思いも2人は抱えた。馬淵監督は「高嶋さんの63勝の記録を伸ばして欲しい気持ちもある。でも自分が1勝でもしたい。それがつらいし、やりにくい」。甲子園で直接対決は、明徳義塾が初優勝した02年夏の決勝以来。高嶋監督は「決勝で当たるのが一番いい形」とこぼし、当時も思い返した。

 昨秋の近畿大会4試合すべてで2桁安打と強打の智弁和歌山。対して明徳義塾もチーム打率3割8分7厘は出場校中トップ。どんな試合が展開されるのか、この日の対談のように先が読めない。高嶋監督にとっては20年ぶり、馬淵監督は初の春制覇へ、名将勝負が第1関門となった。【辻敦子】(学年は新学年)