<センバツ高校野球:組み合わせ抽選会>◇14日◇大阪・オーバルホール

 離島の結束力で強豪撃破だ!

 第86回全国選抜高校野球大会(21日から12日間・甲子園)の組み合わせ抽選会が14日、大阪市内で行われた。奄美大島から21世紀枠で初出場の大島(鹿児島)は、1億円にも上る支援を受け、当日は全校応援を予定。第5日第3試合で昨秋近畿大会Vで今大会最多38回出場の龍谷大平安(京都)に挑む。

 クジを引いた大島・重原龍成主将(3年)は、正面のボードを横目でちらっと確認してマイクに向かった。「大島高校、29番です」。30番の龍谷大平安との対戦に、胸を躍らせているかのようだった。奄美大島からの初出場。多くのハンディを乗り越えての出場も「参加するだけ」の気持ちはない。最多38回出場の近畿王者へ立ち向かう闘志に満ちあふれていた。

 力強い味方がいる。悲願の甲子園出場が決まると、OBや地元の有志などから寄付が集まった。さらに兵庫県・尼崎市に多数いる奄美大島出身者も支援。その金額は1億円にも上るという。地元のフィーバーぶりに渡辺恵尋(よしちか)監督(45)は「中学卒業後に尼崎に行った人が多くいると聞いています。力に変えられると思います」と感謝した。

 試合当日は全校応援が予定されている。奄美大島から船で約10時間かけて鹿児島へ。そしてバスで甲子園へ。およそ1日がかりの移動でアルプスを埋める予定だ。渡辺監督は「応援も奄美地方でうたわれている六調という独特の踊りの音楽があるんですが、それを使うらしいです」。すでに動画サイトにアップして、みんなで振りを練習するように呼びかけているという。

 チームは13日に大阪入り。伊丹空港には約100人の出迎えがあったという。きょう15日は練習試合を予定するなど、地元に帰らず大阪で調整を続け本番に臨む。重原主将はキッパリ言った。

 重原

 相手は小さいころからあこがれていた強豪。でもその高校を倒してドラマをつくりたい。100%の力を出しても勝てない。120%以上の限界に挑戦して1点でも多く点を取りたい。甲子園にのみこまれるんじゃなく、スタンドの応援を借りて、奄美大島全体で相手をのみこんで、立ち向かっていきたい。

 グラウンドのナインだけでない。奄美大島がひとつのチームとなって、大島旋風を巻き起こすつもりだ。【浦田由紀夫】(学年は新学年)

 ◆大島

 1901年(明34)大島農学校として創立。大島中(旧制)を経て53年から現校名に。奄美大島でもトップクラスの進学校で普通科のみ。生徒数は748人(女子421人)。校訓は「和親」「協同」「自治」「奉仕」。野球部は72年に軟式から硬式に移行。昨年秋の鹿児島大会で準々決勝で樟南に勝利して4強を手にした。空手道部、陸上部、吹奏楽部も全国区。地元では「大高(だいこう)」の名で親しまれている。所在地は鹿児島県奄美市名瀬安勝町7の1。屋村優一郎校長(59)。

 ◆大島高校からの移動

 予定されている全校応援は大島がある奄美大島から船で10~11時間かけてまず鹿児島市内へ。それからバスで甲子園へと向かうが、高速バスだと約12~13時間。合計22~24時間となる。距離にすれば鹿児島までが約350キロ。鹿児島から甲子園は約880キロ。計約1200キロは、東京~博多間の新幹線の距離に匹敵する。