春夏通じて都立勢初の甲子園勝利へ、バッティングセンターから出陣だ。第86回選抜高校野球大会が今日21日、開幕する。20日は開会式リハーサルを行い、21世紀枠で初出場する小山台(東京)は、雨天のため急きょ兵庫・西宮市のバッティングセンター「ビーコンパークスタジアム」で練習を行った。21日の履正社(大阪)戦に向けて、地元から約3800人の応援団が集結することも決定し、歴史的勝利を目指す。

 カキーン、カキーンと室内に打球音が響きわたる。小山台の練習締めは、何とバッティングセンターだった。とはいえ、シーズンオフにはプロ野球選手の自主トレにも使われる立派な施設。硬式球対応のマシンを100、110キロに設定し、午後1時から2時間、1人20球×6回を黙々と打ち込んだ。

 雨で予定していたグラウンドが使えず、甲子園で予行演習が行われていた午前10時の段階でも練習場所は未定だった。バタバタの中で帯同スタッフが見つけたのがビーコンパークスタジアムだった。くしくも1回戦の対戦校である履正社野手陣も午前中に練習していた場所。奇妙な偶然だったが、エース伊藤優輔投手(3年)は気にするそぶりもなく楽しそうにバットを振った。「テスト期間中もリフレッシュで時々バッティングセンターに行くんです。気持ちが落ち着きました」と、笑顔でラスト練習を終えた。

 “大応援団”のために勝つ。当日はバスが計34台、新幹線で900人が駆け付け、フリーで来る人も合わせると約3800人がアルプスを埋める予定。ツアーチケット3000枚が1時間以内に完売するなど“小山台フィーバー”はナインの想像を超える。「(ツアー)チケットを買えなかった人もいたと聞きました。21世紀枠ということで卒業生以外でも応援してくれる人がたくさんいる。お客さんが入って盛り上がってくれた方がいい」と、エースは大声援を力に変える。

 都立校初の勝利へ向け、やり残したことはない。福嶋正信監督(58)は「せっかく甲子園に来たんだから。打ちますよ!」とすがすがしい表情で練習場を後にした。都立校の星となるべく、小山台が今日、重い扉をこじあける。【和田美保】