<センバツ高校野球:佐野日大2-0鎮西>◇23日◇1回戦

 佐野日大(栃木)のドラフト上位候補左腕、田嶋大樹投手(3年)が5安打12奪三振完封で、甲子園デビューを飾った。自己最速タイの最速145キロの直球に3種類のスライダーを織り交ぜ、鎮西(熊本)を破った

 9回2死一、二塁。この日初めてのピンチが最終回に訪れたが、田嶋は表情ひとつ変えず、最後は131キロの直球で3球三振に仕留めた。「最後は冷や冷やしましたが、できれば三振を取りたかったので良かったです」と控えめに笑った。

 2回には最速タイとなる145キロをマーク。さらに、縦、横、斜めと投げ分ける3種類のスライダーが光った。入学時は横だけだったが、楽天の松井裕樹投手(18=桐光学園)を手本に縦と斜めを習得。今日も横のスライダーでカウントを整え、縦のスライダーを決め球に使った。佐川昌捕手(3年)は「斜めのスライダーも良かったです」と、縦と横の中間も使い投球の幅を広げた。

 無四球で奪った毎回の12三振中、スライダーで4三振。楽天松井のように、直球と同じような腕の振りから繰り出す好投で空振りの山を築いた。「横のスライダーが良かったと思います。変化には自信があります」と言い切った。

 堂々としたマウンドさばきの裏には苦悩もあった。昨秋の関東大会で左足首の靱帯(じんたい)を痛め、本格的な投球は3月に入ってから。日に日に増す周囲の評価に焦りを感じたこともあったが、「(高い評価を)言ってもらえることはありがたいこと」と、プラスに考え上半身のトレーニングなどを地道に積み、甲子園を目指した

 父の夢も果たした。秀則さん(46)は栃木県内の県立高校で甲子園を目指していた。「野球部に所属していた程度」と照れ笑いを浮かべるが、息子が高校に入るまでは夕食後、毎日のように練習に付き合った。制球力をつけるためベースの四隅に投げる練習も教えた。

 寮から自宅に戻った際は2人で試合のVTRを見る。「甲子園に連れて来てもらえてうれしい」と秀則さん。今日、田嶋家に“甲子園初勝利”という新たなVTRが追加された。【和田美保】

 ◆田嶋大樹(たじま・だいき)1996年(平8)8月3日、栃木・宇都宮市生まれ。鹿沼ボーイズでは中3時にAA世界選手権に出場し銅メダルを獲得した。昨秋の公式戦は7試合55回を投げ、自責点3、防御率0・49。球種は直球と3種類のスライダー、カーブ、フォーク。好きな投手はロッテ成瀬。182センチ、76キロ。家族は両親と弟。左投げ左打ち。