<センバツ高校野球:龍谷大平安16-2大島>◇25日◇1回戦

 21世紀枠・大島(鹿児島)の熱い1日が終わった。鹿児島の離島初の甲子園は、昨秋近畿王者の龍谷大平安(京都)に大敗した。それでも中盤までは1-1と互角。11安打を放つなど、最後まであきらめない姿勢で、島から駆けつけた大応援団と甲子園を存分に楽しんだ。

 夢のような2時間15分だった。大島ナインはのびのびとプレーした。4回まで1失点で踏ん張っていたエース左腕福永翔投手(3年)が5回につかまった。2死三塁から龍谷大平安の5番中口に左前勝ち越し打を許すと続く常に左翼席へ2ランを運ばれた。この日、公式戦で初めて本塁打を、しかも2発浴びた。「打たれて当たり前の相手。直球を打たれたので気持ちよかった」と真っ向勝負に悔いはなかった。

 6回、2死から連打を浴び流れを止められなくなった。超満員のアルプス、内、外野にあふれた応援団からの「がんばれ大高」コールに福永は「涙が出そうだった」と背中を押された。

 実は左肩が悲鳴を上げていた。17日に広島で広陵と練習試合を行った時に痛めた。登板後、慌てて移動しアイシングを忘れたのが原因。この日も「6回くらいから痛くて…」。無念の途中降板。限界だった。

 終盤、点差は開く一方だったが、打線は11安打を放った。6回には2死二塁から左前打で二塁走者の福永が三塁コーチの制止を振り切って本塁突入し憤死。7回には無死一塁から主将の重原は右中間を破ったが、前の走者が止まっているのに三塁を狙い、押し出す形になって前の走者の前山がアウト。積極走塁も相手はミスしてはくれなかった。

 重原主将は「すごく楽しい甲子園だった。島にいる人だけでここに来られた。大島で甲子園に来たいという子が増えるとうれしい」と、胸を張った。元内野手の福永は高校で投手として成長し、甲子園のマウンドに立った。夢をかなえた大島ナインに涙はなかった。【石橋隆雄】

 ◆鹿児島勢最多失点

 大島の16失点は春夏を通じ鹿児島県勢の甲子園最多失点。過去最多は15点で60年春の慶応15-2鹿児島商、95年夏の旭川実15-13鹿児島商の2度。