<センバツ高校野球:龍谷大平安6-2履正社>◇2日◇決勝

 龍谷大平安(京都)が、豊富な投手陣と自慢の強打で春の日本一に輝いた。2点リードの8回1死満塁、カウント2-0から救援した中田竜次投手(3年)が無失点に抑えるなど、4投手の継投で6-2と履正社(大阪)を下し初優勝。春夏通じて初決勝の履正社の悲願はならなかった。

 前日に肩の痛みを訴え登板を回避したエース中田竜次(3年)がマウンドに走った。2点リードの8回1死満塁、カウントは2-0だった。初球はボールで3-0。押し出しのピンチに原田英彦監督(53)の言葉が頭をよぎった。「背番号1を背負っているんやから気持ちで投げてこい」。直球で追い込み、最後は変化球で三振。続く打者も打ち取った。

 エースの好投に4番河合泰聖主将(3年)も応えた。9回、公式戦初本塁打でのダメ押しに「鳥肌が立った。春この場所で負けたのが悔しかったのでうれしくて(涙が)こみ上げてきた」と、涙を流した後には笑顔がはじけた。

 昨春の借りを返したかった。昨年センバツ初戦で逆転負けし、スタンドからヤジが飛んだ。「おい原田~!

 何しとんねん。お前じゃ勝てん!」。夏3度の優勝を誇る古豪ゆえの叱咤(しった)かもしれなかったが、悔しさとふがいなさでいたたまれなかった。河合は「監督が(客席の)おっちゃんから言われていた姿を見て悔しかった。甲子園に戻ってきて絶対見返したろうと思った」。

 雪辱を誓いながらも、昨夏は京都8強で敗退。新主将もなかなか決まらず、新チームのスタートはもたついた。転機は昨秋の京都府予選決勝。福知山成美に逆転勝ちし、監督の涙を見た瞬間から気持ちは変わっていった。「選手同士で怒り合えるようになった。『お前、何しとんじゃ』とボロカス言われたこともあった」(中口)。仲間に言われたことを素直に受け止められるようになった。

 春夏制覇へ。原田監督は「追われても追われても突き離す。そんなチームになりたい」と誓った。再び頂点に。気持ちは走りだした。【辻敦子】

 ◆京都勢66年ぶりV

 センバツで京都勢が優勝したのは、48年に京都一商(現西京)が決勝で同じ京都の京都二商を1-0で破って以来2度目。

 ◆全試合5点以上

 龍谷大平安は今大会5試合すべて5得点以上。全試合5点以上の優勝は39年東邦商、88年宇和島東、94年智弁和歌山に次いで20年ぶり。