世代の本塁打王が夏に挑む。史上19人目の1試合2本塁打を記録した選抜大会から智弁学園(奈良)岡本和真内野手(3年)がまたパワーアップした。6月中旬にぎっくり腰を起こしたが実戦復帰の6月21日の練習試合・北大津(滋賀)戦で70号。今秋ドラフト上位候補は激戦の奈良を制し自身初の夏の甲子園を勝ち取る。

 状態が万全でないとは思えない弾道だった。6月21日。岡本が9回2死からの代打でフォークを左翼に運んだ。数日前にぎっくり腰になり出場も見合わせる予定だった。「全力ではまだ振れないので、逆に力まずに振れました」。ここ一番の打席で技術と集中力を発揮。根底にあるのは「味方が回してくれたチャンスは無駄にしない」という気持ちだ。

 選抜大会1回戦・三重戦。甲子園デビュー戦で史上19人目の1試合2発。初打席でバックスクリーンに1発をたたき込んだ。地元・奈良で佐藤薬品スタジアムの場外に運ぶパワーは知られていたが、その力を証明。甲子園の新怪物になった。だが2回戦は佐野日大(栃木)田嶋大樹投手(3年)に2三振。大会NO・1投手と打者の対決に岡本は「チームで攻略」とバットを短く持ち臨んだが得点にからむ1安打にとどまった。最後は救援した岡本が打たれサヨナラ負け。全国クラスの投手攻略は課題になった。

 春以降、内角対策に取り組んだ。自分のためだけではなかった。センバツ前、岡本から笑顔が消えた時期があった。自分だけが取り上げられることが「みんなに申し訳ない」と、真剣に悩んだ。「甲子園で本塁打を打ちたい」という夢も、語ることがつらくなった。そんなとき主将の高岡佑一(3年)が「お前はそんなこと、気にせんでええんや」と言ってくれた。「その言葉で本当に楽になったんです」。それならどんな窮地でもチームを救えるよう、本当に特別な存在になろう。その思いが成長を支えた。3番一塁を基本に外野、救援投手も兼務の予定。自身、最初で最後の夏の甲子園。聖地で100号をかける日が来るかもしれない。【堀まどか】

 ◆岡本和真(おかもと・かずま)1996年(平8)6月30日、奈良・五條市生まれ。北宇智小1年から「カインド」で投手兼内野手として野球を始める。五條東中では「橿原磯城シニア」で投手兼三塁手。智弁学園では1年春からベンチ入り。50メートル走5秒8。遠投100メートル。183センチ、95キロ。右投げ右打ち。