<高校野球熊本大会:秀岳館11-0真和>◇11日◇2回戦◇藤崎台

 社会人パナソニック元監督で、4月から秀岳館監督に就任した鍛治舎(かじしゃ)巧監督(63)が、初めての夏で大勝発進を決めた。NHKの甲子園中継では人気解説者としても活躍。真和を5回コールドで破り、初戦を突破した。

 愛弟子が豪快に試合を決めた。あと2点でコールド勝ちとなる5回1死二、三塁。カウント1-2から代打の九鬼(くき)隆平(1年)が左翼芝生席へ3ランをたたき込んだ。

 「パワーが持ち味なので2ストライクからの方が無駄な力が入らずに打てるんです。目線もブレないですし」。追い込まれたらバットを一握り短く、打席の後ろで立ち、スタンスを大きく広げてノーステップで打つ。鍛治舎監督が日本代表でコーチをしていた時、当時の主力、古田敦也氏(元ヤクルト)らにも教えた「2ストライク打法」でアーチを描いた。

 九鬼と2番遊撃でチーム唯一の猛打賞、2打点の松尾大河(1年)は、鍛治舎監督が昨年まで指揮した中学の「オール枚方ボーイズ」から、指揮官を慕って入学。ジャイアンツカップなど中学硬式5冠の実績を持つ教え子が鍛治舎野球を体現し、暴れ回った。

 3年生も負けてはいない。3回には4番で主将の藤吉優捕手が左中間へ流す満塁弾を放った。鍛治舎監督が就任した4月、メンバーの練習量は3倍、密度は5倍になった。突然の厳しさに選手はついていけなかった。3年生を中心に不満がたまった1週間後、藤吉は部員141人を代表し、監督に練習量の軽減を直訴。鍛治舎監督は「誰もついてこれなかった。ギアチェンジして、かえってよかった」と訴えを受け入れた。だが就任初戦の4月19日、春季九州大会で西日本短大付(福岡)のエース小野郁(3年)に3安打完封負け。全国レベルの投手に完敗し、選手は甘さを悟り、監督の教えを理解した。

 新監督は厳しいだけではない。「丸刈りは格好悪い」と6ミリ以上短くすることを禁止。選手はスポーツ刈りなどでプレーする。初の勝利の校歌に「甲子園で聞けるといいですね」。絶対的エースはいないが、継投で逃げ切る。果敢に足技を仕掛ける。鍛治舎采配がはまれば、就任即甲子園も夢ではない。【石橋隆雄】

 ◆鍛治舎巧(かじしゃ・たくみ)1951年(昭26)5月2日、岐阜県生まれ。県岐阜商で69年、センバツ通算100号を放つ。早大では大学日本代表の4番を務め、東京6大学通算800号本塁打を記録。74年に松下電器(現パナソニック)に入社し、81年秋に引退。86年から91年まで同社監督を務め、89年から91年まで日本代表コーチも兼任。85年から10年までNHKの高校野球解説委員を務めた。今年3月末でパナソニック専務役員を退任し、秀岳館監督に就任。