<高校野球神奈川大会:横浜7-0厚木西>◇17日◇2回戦◇横浜

 ラストサマーの主役に躍り出た。ドラフト上位候補の横浜・浅間大基外野手(3年)が、1回の今大会初打席から2打席連続本塁打など4打数4安打3打点の大暴れ。1本目は自身初となる左方向への流し打ちでスタンドインさせ、6球団18人のスカウトに進化を見せつけた。チームは厚木西を7回コールドで圧倒した。

 自分でも、初めての感触だった。1回。先頭打者の浅間は、カウント3-1からの5球目でファーストスイング。外角高めの真っすぐに逆らわずバットを出すと、打球は左翼席へ向けフワフワと上がった。「今までにない感触で、どうなんだろうって思いました」。半信半疑で一塁を回った。最前列に打球が吸い込まれたのと同時に、三塁コーチが「入った!」と、叫ぶ声が聞こえた。

 2度目の驚きは、すぐだった。2回、第2打席の6球目。この日2度目のスイングで内角高めのスライダーを引っ張った。打球は右翼席中段まで飛んでいった。わずかふた振りでの連発。「逆方向に(本塁打を)打ったのは初めて。自分でもビックリしましたが、チームのみんなもビックリしていました」と、驚きを隠せない。高校通算29、30号を広角に打ち分け、6球団18人のスカウトに進化した姿を見せつけた。

 技術的には、今春の関東大会(対霞ケ浦)で兆しはあった。左翼線へ、フェンス直撃の二塁打を放った時、感覚をつかんだ。「体を開かずに打てました。レフト線への長打は今まで打てなかった」。1つ階段を上がった後、苦手な「外角」の克服に取り組んだ。練習試合では打ちごろの内角をわざと見逃し、外角ばかり狙った。今夏で退任する小倉清一郎コーチ(70)から2週間、つきっきりで指導を受けた成果もあった。「浅間は良くなっていた。『左手首をこねないように』って言ってきた」(同コーチ)。毎晩苦しくなるまで腕立て伏せをして筋力をつけ、リスト強化に取り組んだ証しだった。

 メンタル的には、ライバルの存在が大きかった。同じくドラフト候補の高浜祐仁内野手(3年)とは公私ともに仲が良い。タイプは違うが、互いに認め合う。大会前、秘めた思いを明かした。「入学した時から、周りは『高浜、高浜』でした。自分が有名になりたいわけじゃないけど、同級生に負けたくなかった。高浜よりいいバッティングをしなきゃ、って。それで頑張ってきました」。ライバルへの思いを口にしたのは初めてだった。「まだまだですが、少しだけ自信がついて話せるようになりました」と、照れ笑いした。

 第3、第4打席でも安打を放ち、4打数4安打3打点。渡辺元智監督(69)も「苦しみながら打ち込んだ成果」と評価した。関東大会で屈辱のコールド負けを喫した横浜スタジアム。逆襲のサイレンが鳴り響き、浅間の高校生活最後の夏が最高の形で幕を開けた。【和田美保】

 ◆浅間大基(あさま・だいき)1996年(平8)6月21日、東京・新宿区生まれ。小1で野球を始め、牛込一中では「新宿シニア」に所属し投手兼外野手。3年時に投手として全国大会8強入り。横浜では1年春からベンチ入りし、2年夏の県大会準々決勝で桐光学園・松井裕樹投手(現楽天)から2ランを放った。50メートルは6秒1。家族は両親と姉2人。183センチ、74キロ。右投げ左打ち。