<高校野球岩手大会:盛岡大付6-1一関一>◇18日◇3回戦◇岩手県営

 西武菊池、日本ハム大谷に続き、今年も岩手に怪腕が現れた。最速150キロ右腕の盛岡大付松本裕樹投手(3年)が、一関一戦で今夏初先発し、最速148キロで8回11三振を奪い、3安打1失点に抑えた。直球に多彩な変化球を交える巧みな投球術を披露し、集まった10球団26人のスカウトからは、ドラフト1位クラスの評価が飛びだした。

 いつも通り、ひょうひょうとした表情で1球目のストレートを投げ込んだ。盛岡大付・松本はゆったりと右腕をしならせ、リリースの瞬間だけ力を込めるボールは、打者の前でぐっと伸びた。マウンドに上がるのは6日の練習試合(対青森山田)以来、約2週間ぶり。確かめるように初回は直球のみを投じ、わずか10球で3人を抑えた。

 だが続く2回、一関一の4番竹沢に投げたストレートが外から中にわずかに入り、右翼に運ばれた。グラブを持つ左手で汗を拭いながら、「あんまり気にならなかった」。表情を変えず、ここからが松本の真骨頂だった。キレ味抜群のスライダーで続く打者2人を連続見逃し三振。フォーク、チェンジアップなど多彩な変化球を交えながら、3回から6回まで3者凡退。8回まで無四球で11三振を奪った。「リラックスして投げることが出来た。80点ぐらい」と満足そうに振り返った。

 抜群の制球力に加え、最速は148キロを計測。バックネット裏に集結したスカウト陣も賛辞を惜しまなかった。初めて視察したDeNA高田GMは「評判通りのいい投手。まとまっている」と高評価。ロッテ松本編成統括は「体もしっかりしていて、高いレベル。(ドラフト1位の)12人に入るのは間違いない」とうなった。春以降、評価はうなぎ上り。済美(愛媛)安楽智大投手(3年)に次ぐ高校トップクラスの右腕として、今秋のドラフト上位は間違いない。

 最後の夏。脳裏に浮かぶのは、昨夏決勝で花巻東に屈した苦い思い出だ。先発し5回2/3を7安打5失点。「今度は甲子園に行かなきゃいけない」と思いは強くなった。冬場の筋肉トレーニングなどで、体重は昨夏より7キロ増。太ももを中心に体全体ががっちりし、力強さとキレが加わった。「成長した姿を見せられたと思う」。1年前とは違う、ひと回り大きくなった姿でチームを甲子園へと導く。【高場泉穂】

 ◆松本裕樹(まつもと・ゆうき)1996年(平8)4月14日生まれ、横浜市出身。南瀬谷小1年、南瀬谷ライオンズで野球を始める。南瀬谷中では瀬谷ボーイズに所属。盛岡大付では1年春からベンチ入り。12年夏甲子園でもメンバー入りし、13年春のセンバツでは安田学園戦に先発した。183センチ、80キロ。右投げ左打ち。家族は両親、兄、弟。血液型A。