<高校野球熊本大会:城北7-4多良木>◇18日◇4回戦◇藤崎台

 プロ注目の多良木・善武士(ぜん・たけし=3年)投手が4回戦で姿を消した。最速149キロ右腕はネット裏でソフトバンク、阪神などプロ9球団のスカウトから熱視線を送られたが、徹底的に対策を練ってきた城北に11安打を浴び7失点で敗れた。

 2度追いつく粘りを見せた多良木打線も、9回に3点を奪われ力尽きた。力ない右飛で最後の打者となった善は、一塁をまわった所で両手を膝につき、しばらく動けなかった。

 「夏の大会に入って、自分の思うような投球ができなかった。意識しないようにしたけれど、プレッシャーがあった」

 第1シードで迎えた最後の夏。多良木町全体の「149キロ右腕の善がいれば初の甲子園へ行ける」という期待を一身に背負った。17歳の心と体は知らず知らずのうちに調子を崩し、この日の直球も最速は145キロ。140キロ台前半がほとんどだった。「自分の球に自信がなかった。思ったより直球が高めに浮いた。カウントを取りに行く外角の直球、外の変化球をしっかり逆方向に打たれた」。緩いカーブを多投し、かわそうとしたが、善対策を十分に行ってきた城北打線には通用しなかった。

 初戦の2回戦湧心館戦は登板せず。3回戦の芦北戦では7回3安打無失点、毎回の12奪三振も納得できる投球ではなかった。試合後、涙を流しながら「監督さんを甲子園に連れていけなくて」とあいさつした善を、斎藤健二郎監督(65)は優しく抱きしめた。

 善は「社会人か進学して野球を続けます。最終的にはプロに行きたい」と、次のステージでさらに腕を磨くつもりだ。ソフトバンク永山チーフスカウトは「投げっぷりは悪くない。将来性はありますよ」と話すように、伸びしろは十分。これからの野球人生で活躍し、多良木町にたっぷりと恩返しをする。【石橋隆雄】