<高校野球東東京大会:東亜学園8-6岩倉>◇21日◇5回戦◇神宮

 東亜学園(東東京)が、劇的な逆転サヨナラ弾で、昨夏の地区割り変更後初の8強進出を決めた。1点を追う9回2死一、三塁、6番小沢賢太外野手(3年)が逆転サヨナラ3ランを放ち、岩倉を破った。

 ヒーローを出迎えに走った東亜学園ナインは劇的な幕切れに泣いていた。9回2死一、三塁から飛びだした逆転サヨナラ3ラン。泣かせた小沢に涙はなかったが、興奮は隠せなかった。「高めの真っすぐかスライダー。覚えていないんです」。速球と変化球の違いさえも分からなかった。

 8回に2失策、暴投も出て4点差をつけられた。上田滋監督(57)は負けを覚悟した。「選手にもう『勝手にやれ』といっちゃいました」というほどだった。勝手にやらされた?

 選手はあきらめなかった。その裏、2点。9回2死後、朝倉雄太外野手(3年)が二塁手のグラブをかすめる安打で1点差に迫ると、直後に小沢からアッと驚く1発が飛びだした。

 絶不調だった。19日の4回戦までの4番打者は6番に降格されていた。8回まで3打数無安打。三振と内野ゴロ2つ。通算では11打数2安打だった。「下げられてもしょうがない。タイミングの取り方に迷っていた」。そこで9回は「ひと間置いたんです」。するとドンピシャ。打球は左翼席で大きく弾んだ。

 「野球の神様がいるというか、運がふりかかってきた」と上田監督。昨年、東西東京の区割り変更で、中野区にある東亜学園は西から東に移った。西では8強入りは15度も、4回戦敗退。「中野区が来てラッキーと言われないようにしないと」と話したが、2年目で8強入りした。導いた小沢は「サヨナラなんて野球をやって初めてです。ボールは親にプレゼントします」。球場を出ると握手攻めにあった。それでも左手は、記念のボールをしっかりと握っていた。【米谷輝昭】

 ◆小沢賢太(おざわ・けんた)1996年(平8)4月27日、東京・小平市生まれ。小学2年で野球を始め、小平五中に進むと「東村山シニア」に所属。ポジションは一塁。同チーム監督の勧めもあって東亜学園へ。高校通算本塁打は11本。公式戦では今年4月の春季大会3回戦(早実戦)以来の2本目になる。好きなプロ選手は中田翔(日本ハム)。176センチ、79キロ。右投げ右打ち。

 ◆昨年の東西東京の地区割り変更

 東西東京大会の参加校数を近づけるため、昨年17年ぶりに変更。中野区を「東」、世田谷区を「西」とした。東東京に移ったのは東亜学園のほかに明大中野、実践学園、堀越など8校で、西東京には国士舘、日大桜丘、駒大高など20校が移った。