<高校野球秋田大会:角館3-1能代松陽>◇23日◇決勝◇こまちスタジアム

 角館が能代松陽を破り、春夏を通じ初の甲子園出場を決めた。3回に小笠原翔太外野手(3年)の適時二塁打で先制すると、4回にも連打で2得点。このリードを、エース右腕相馬和輝(3年)が6安打1失点完投で守り切った。2年生だった昨夏決勝で延長15回サヨナラ負け、今春には21世紀枠候補に選ばれながらセンバツ出場を逃した悔しさを、最後の夏に晴らした。

 角館の相馬が耐え切った。9回裏2死二、三塁のピンチ。3点のリードはあっても安心はできなかった。強い雨が降る中で投じた135球目は、右前に運ばれた。1点は許したが、右翼手の小笠原からの好返球で二塁走者はホームでタッチアウトに。待ち望んだ優勝の瞬間、エースは両拳を握りしめ「よっしゃ!」とほえた。勝利の校歌を歌う途中からは涙が止まらない。「チームを信じて投げられた。やっと手にした甲子園切符です」。

 ようやく、ここまでたどり着いた。昨夏決勝。秋田商と延長15回の死闘を繰り広げた末、3-4でサヨナラ負けした。2年生エースとして全6試合776球を1人で投げ抜いたが、報われなかった。新チームになった秋は県で優勝。続く東北大会で8強入りを果たし、今春センバツの東北21世紀枠候補に選ばれた。だが、吉報は届かなかった。

 憧れの甲子園を2度、目の前で逃したショックは大きかった。春は不調に陥った。県3回戦ではコールド負けの屈辱も味わった。「勝ちたい、という気持ちが薄れていた。やってきたこと全てダメなんじゃないかって」。だが湯沢淳監督(38)からの「そんなエースはいらない。やめちまえ」の叱咤(しった)を受け、目が覚めた。悔しいのは自分だけじゃない。打たれても守ってくれる仲間がいる。ひたすら走り込み、投げ込みを行い「一からやり直して」臨んだ最後の夏。三度目の正直で、甲子園への扉を開いてみせた。

 打線もエースをもり立てた。3回に小笠原の適時二塁打で先制し、4回には赤倉、そして再び小笠原の連続適時打でリードを広げた。この日、2打点の小笠原は「相馬を楽に投げさせたかった。打てて良かった」。相馬も「みんなが打って守ってくれたおかげです」と感謝した。

 いよいよチームにとって、初めての夢舞台に立つ。「ここからが本番だと思っています。秋田県の全チームの思いをぶつけて、勝ち上がりたい」と相馬。角館の夏は、まだまだ終わらない。【成田光季】

 ◆相馬和輝(そうま・かずき)1996年(平8)6月28日、大仙市生まれ。小4から北神小ドリームキッズで野球を始め、内野手。平和中では捕手と遊撃手で中2時に大曲仙北選抜選出。角館高で投手に転向し1年春からベンチ入り、同秋からエース。172センチ、70キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄。

 ◆角館

 1925年(大14)創設の県立校。14年4月に角館南高校と統合した。生徒数は758人(女子466人)。野球部は31年創部。部員73人(マネジャー3人含む)。13年県準優勝。OBに俳優の柳葉敏郎。所在地は秋田県仙北市角館町小館77の2。青柳徹校長。◆Vへの足跡◆2回戦12-1二ツ井3回戦7-3能代準々決勝6-0秋田南準決勝7-0由利工決勝3-1能代松陽