<高校野球奈良大会:智弁学園15-0登美ケ丘>◇25日◇準々決勝◇佐藤薬品スタジアム

 済美・安楽がいない甲子園の主役はオレだ!

 奈良大会で、今秋ドラフト上位候補の智弁学園・岡本和真内野手(3年)が、7球団20人のスカウトの前で左翼へ130メートルの場外2ランを放った。今夏2本目は、高校通算72号。2安打5打点の活躍で、5回コールド15-0と登美ケ丘を破り、2年ぶりの4強入り。春夏連続の甲子園まで、あと2勝に迫った。

 岡本のひと振りに球場がどよめいた。6点リードの4回無死一塁。ボールを見送った2球目、真ん中に甘く入ったスライダーを完璧にとらえた。打球は、そのまま左翼スタンド奥の林へ消える特大130メートル弾となった。7球団20人のスカウトが見守る中、「これぞ怪物」といえる高校通算72号を見せつけた。

 「甘い球が来たら、次のバッターが打ちやすいようにしてあげようと思って。本塁打は狙ってなかった。つなぐ気持ちだけだった」

 巨人山下スカウト部長が「本塁打打者としての魅力がある」と認める素質の持ち主だ。しかし、淡々と特大弾を振り返る姿には、理由があった。

 3回戦の奈良高専戦前日の22日、小坂将商監督(37)が3年生に対し、カミナリを落とした。「まとまりがないと感じたのでチームのために動けと伝えた。大会中は9年間で初めてですね。今年は甲子園に行きたい気持ちが強い。岡本にも怒りました」。熱い思いを伝えた。

 思いを受けた岡本は、この日、ボール球に1度も手を出さずに2四死球。無死満塁の場面は押し出し四球を選んだ。注目が高まると敬遠も増える。それでも、勝利のために我慢出来るかが大切だった。小坂監督は「四球のときに無理やり打ちに行ったらチームのためではない。我慢したのは(チームのことを)考えたということ」と主砲の成長を認めた。

 次の課題は、ひと振りでいかに仕留めるか。体のキレを追求して、普段とは逆の左打ちの素振りをするようになった。腹斜筋をバランスよく鍛えることでより体のキレが増す。亀岡副部長に教えられ、この日も次打者席で左打ちを見せた。研究熱心な姿が、この日の1発へとつながった。

 準決勝は、昨夏3打数無安打に抑えられた大和広陵の好投手・立田将太(3年)と対決する。「良い投手」と認めるライバルとの対戦を超えれば、聖地へまた1歩近づく。【小杉舞】