<高校野球大阪大会:PL学園7-3関大北陽>◇29日◇準決勝◇舞洲

 野球未経験の正井一真校長(66)が監督を務めるPL学園が、5年ぶり頂点へ王手をかけた。不祥事で昨夏大会不参加、選手が采配を振って快進撃。6回に追いつかれ流れが傾くも、中川圭太主将(3年)の継投策でピンチを切り抜け、8回の勝ち越しにつなげた。甲子園春夏7度の優勝を誇る名門が、今日30日の決勝で3連覇を狙う大阪桐蔭に挑む。

 9回2死二、三塁。ベンチからサインを出す背番号14の宇佐美秀真内野手(3年)は、胸のお守りをギュッと握りしめていた。谷健人投手(3年)が最後の打者を三振に打ち取ると、正井監督は両手を広げてバンザイをした。「昨年出場していない中で、ここまで来られた。本当にできすぎ」と、万感の思いだった。

 部内不祥事により昨夏は大会不参加。当時の監督も辞任し、現在は野球未経験の正井校長が監督だ。そのため戦術を考え、サインを出すのも選手の役目。そんな状況で迎えた2年ぶりの夏は一丸となって決勝までこぎつけた。

 1回に3点を先制、6回追いつかれた場面で2番手谷に交代。これは主将の中川圭の指示だった。「事前に難波(龍人捕手=3年)と打ち合わせをしていました。(タイミングは)バッチリだったと思います」。継投は先手を打っていく、何度もシミュレーションしてきたことだった。

 練習試合の中で「継投の練習」を始めた。勝ち越される前に、打球が守備の間に落ちるようになれば継投の契機の1つとするなど、夏の大阪大会を控えた20戦あまりの練習試合で、タイミングを習得した。中川は春はまだ代え時に迷いがあったが「大事なのは判断に悩まないこと」と腹に決めた。

 昨年8月24日、大阪・富田林のPL球場で再出発した。土砂降りの中の入善高校(富山)との練習試合。深瀬猛コーチ(45)が「どうしても選手に試合がさせたい」と入善に頼み、試合が行われた。結果はPL学園が25-0で勝利。再び野球ができる喜びを味わった日だった。

 戦術面を選手に任せることで、正井監督はチームを鼓舞することに徹する。「ピンチを楽しめ!」と常にチームに言っている。「昨年できなかったことができるんですから」。先輩たちの思いをくみ、選手主体のチームが頂点に挑む。【磯綾乃】

 ◆主な校長兼任監督

 10年に史上6校目の甲子園春夏連覇を果たした興南(沖縄)は、我喜屋優監督(64)が10年夏に理事長、11年4月から校長を兼任した。福知山成美(京都)の田所孝二監督(54)は、今春センバツで敗退した翌日の4月1日付で校長に就任。今夏の京都大会4回戦で敗れるまで監督を兼任した。<PL苦闘アラカルト>

 ◆不祥事発覚

 昨年2月23日夜に大阪・富田林市の寮で、当時の2年生4人(うち暴力は3人)が同1年生1人に暴力を加えた。事態を重く見た学校は春季近畿大会府予選を辞退したが、同4月9日に開かれた日本学生野球協会の審査室会議で、2月24日から8月23日まで6カ月の対外試合禁止処分を決定。夏の大阪大会に出場できなくなった。

 ◆指導者不在

 河野有道監督(64)が同4月に辞任。同8月24日に対外試合禁止処分は解けたが、後任監督が決まらないまま秋季近畿大会府予選を迎えた。開幕直前に池田秀男部長(62)が元部員の校則違反に関する報告遅れで謹慎処分に。野球部長不在では大会に参加できないため、野球経験のない正井校長が野球部長として同9月1日の初戦・大教大池田戦からベンチ入りした。

 ◆センバツに届かず

 秋の大阪2位で近畿大会出場を決め、正井校長が責任教師(野球部長)兼監督としてベンチ入り。選手同士でサインを決め初戦・福知山成美(京都)戦に臨んだが、2-3で惜敗しセンバツ出場はならなかった。