<高校野球神奈川大会:向上5-2横浜隼人>◇29日◇準決勝◇横浜スタジアム

 快速球をうならせ、マウンドで躍動した。向上の右腕、高橋裕也投手(3年)が8安打2失点で完投し、30年ぶりの決勝進出をたぐり寄せた。「剛と柔」を兼ね備えたエースが持ち味を発揮し、強打の横浜隼人打線に立ちはだかった。

 まずは剛。「真っすぐが走っていました」と、いきなり145キロをマークするなど1回を3者凡退で退け、リズムをつかんだ。1試合平均7得点を超える相手打線を2点に抑え込んだ。直球は6回に自己最速タイの146キロを計測するなど、球威は落ちなかった。大会前も練習量を落とさず、逆に走り込んだ。ベース間を10秒間で1往復するインターバルを毎日20本、3分以内で走り抜く800メートル走も数本こなす。スタミナがついた下半身が、156球の熱投を支えた。

 そして柔。学業成績はほとんど5の秀才だ。得意科目は数学。「やり方を間違えなければ、必ず1つの答えにたどりつくから」だ。クレバーさは、投球にも垣間見える。4回までは力で押したが、中盤は「隼人は早打ちなので、いけるかなと」と準々決勝では1球も投げなかったカットボールを多投。手元で微妙に変化させ、5~7回を無安打に抑えた。8、9回は「最後は勢いで」と再び直球。最終回に1点は失ったが、最後まで集中打を許さなかった。

 元ヤクルト高橋智(47)を擁して準優勝した84年以来の決勝。「最後に1点多ければ勝ちですから。打ってくれた点より少なく抑えられればそれでいいです」。秋、春、夏を通じて県大会優勝の経験がない。悲願は目前となった。【岡崎悠利】