<全国高校野球選手権:甲子園練習>◇3日

 雨によるグラウンド状態の不良で、智弁学園(奈良)龍谷大平安(京都)など8校は室内で調整。智弁学園・小坂将商監督(37)は主砲・岡本和真内野手(3年)の起用法について、先発登板の可能性を明かした。今夏最も注目される打者が、投打の二刀流で初の頂点を目指す。

 高校通算73本塁打の強打者の“二刀流”が再び、見られるかもしれない。それも先発登板で。室内で行われた練習後、小坂監督が仰天のプランを明かした。「勝って行ければ」と前置きした上で、「岡本の先発も考えています」と、投手として初の公式戦先発の可能性を示唆した。

 岡本は主砲と救援投手を兼任してきた。183センチ、95キロの体格を生かした最速144キロの本格派右腕だ。センバツ2回戦の佐野日大(栃木)戦で同点の9回裏から登板した。延長10回2死満塁でサヨナラ打を浴び、聖地のマウンドに苦い思い出を残した。奈良大会では、準々決勝の登美ケ丘戦で公式戦ではセンバツ以来となる救援登板を果たし、1回を無失点に抑えた。

 「3番一塁」が基本線ながら、指揮官は「(甲子園のマウンドで)負けたまま終わらせるのはかわいそうなので」と、高校最後の夏も登板させることを決めていたが、状況次第で先発起用に踏みきる。岡本自身も心に残る敗戦として真っ先に「(センバツで負けた)佐野日大戦」を挙げるほど、リベンジへ闘志を燃やしていた。

 もちろん、全国の高校野球ファンが待ち望むのは甲子園での1発。普段は「チームバッティング」に徹する岡本に、小坂監督は「ホームランを打つことはチームへの貢献になる。1本でも多く見せられれば」と話す。センバツでは1試合2本塁打と鮮烈な聖地デビューを飾り新・怪物と認められた。「甲子園で1試合でも多く試合をして4強以上を目指したい」とさらに成長した“二刀流”スラッガーが、今夏の主役になる。【小杉舞】

 ◆甲子園で登板した主な強打者で後に「世界の本塁打王」となる王貞治(早実)をはじめ、巨人で両打ちの先駆者となった柴田勲(法政二)近鉄で中軸を担った金村義明(報徳学園)らは優勝を果たした。プロでは打者のヤクルト小川淳司監督(習志野)も優勝投手を経験。打者として注目されていた清原(PL学園)は大差がついた2試合で登板。

 現役ではヤンキース・イチロー(愛工大名電)DeNA金城(近大付)や楽天松井稼(PL学園)巨人亀井(上宮太子)らも登板。近年では日本ハム中田(大阪桐蔭)ソフトバンク今宮(明豊)広島堂林(中京大中京)らがエースを務めた。