<全国高校野球選手権:日本文理5-2大分>◇12日◇1回戦

 大分の150キロ右腕・佐野皓大投手(3年)が、不完全燃焼のまま初戦で散った。日本文理(新潟)に13安打を許し5失点。この日は最速も145キロ止まりだった。スタミナ不足も実感。プロ志望の右腕はもっと大きく成長することを誓った。また、この試合限りで同校の佐野徹監督(55)が勇退することを明かした。

 初めての甲子園は悔しさばかりが残った。大分の佐野は「悔いはあります」と小さく本音を漏らした。試合前ブルペンでは好調だったが、いざ甲子園のマウンドに立つとフォームを崩した。最速は目標とした155キロには届かず、145キロが2球だけだった。

 それでも省エネだった県大会とは違い、初回から飛ばした。スライダーがさえた。疲れの見えた7回、同点の無死二塁から相手エース飯塚に直球勝負を挑み、中前に決勝適時打を許した。「直球を狙っていたので勝負した」。投げ合う相手に打たれたことが一番悔しかった。1試合2被本塁打は初体験。相手打線に脱帽するしかなかった。

 この日、試合後に佐野監督が勇退する考えを明かした。ナインは5月の関西遠征中に知らされた。今年4月に教頭に就任し監督と両立できなかった。後任は未定だが佐野監督は「教え子が控えているから」と同校OBに道を譲るつもりだ。84年の副部長を皮切りに母校一筋で指導し34度目の夏で初めてたどり着いた甲子園。昨秋から冬場に徹底的に鍛えられ急成長した佐野は、白星を贈れなかったことが心残りだった。

 「プロしか目指していない。プロでは155キロ以上を目指したい。日の丸を目指したい」と佐野の夢は大きい。ネット裏で視察した巨人山下スカウト部長は「将来性はある。後はスタミナ。二回り大きくなれば。甲子園に来て評価が上がった」と話す。悔しい思い出はプロへ向けた大きな1歩となった。【石橋隆雄】