<全国高校野球選手権:明徳義塾10-4智弁学園>◇15日◇1回戦

 さらば、怪物…。今秋ドラフト上位候補、智弁学園(奈良)・岡本和真内野手(3年)の甲子園が終わった。エース岸潤一郎(同)を擁する明徳義塾(高知)に完敗。岡本は2安打1打点で意地を見せたが、投げては2/3回2失点でチームを救えず。敗退後はプロでの成長を誓った。

 智弁学園のスラッガー岡本の夏は、初戦で幕を閉じた。注目された好投手岸との対戦。期待されたアーチは実現せず、高校通算本塁打は73本でストップした。3点を追う3回2死二塁、強烈な打球で左前適時打を放ち意地は見せた。「少しでも点差を縮めたかった」。しかし、4強の目標には届かず「悔しい」を繰り返し、涙はそっと胸にしまいこんだ。

 岸から2安打を放つも2三振を喫した。救援登板もあり“二刀流”も実現。投手として3番打者岸と対戦したが、左前に適時打を浴びた。

 岡本

 思った通りのいい投手だった。悔しいしかないが、甲子園で終われてよかった。いつもはすぐ泣くんですけどね…。なぜか泣けない。

 “怪物”と呼ばれるようになるまでは、挫折も経験した。五條東中3年で日本代表として、米国での世界大会に出場したが、大会前に右肘を剥離骨折。DHの出場で「あのときが一番つらかった」。しかし、この渡米が転機となった。ホームステイ先の生活で、当時87キロだった体重が100キロを超えた。帰国後、今まではライナー性だった打球が、外野を越すようになった。このときから「スラッガー」に変身していた。

 高校入学後は、オフも1人で自主練習した。休憩中でもテレビ朝日系「熱闘甲子園」の録画で活躍した人たちを研究した。「野球番組を見ると、気持ちが高まってまた野球がしたくなる」。まさに365日野球漬けだった。

 夏の甲子園が決まると、周囲は「アーチ」を期待した。これまでは「チームバッティングなので、つなぎたい」と答えていたが、明徳義塾戦を前に「内心は、打ちたい」と漏らしていた。最後の夏への強い思いは、夢と消えた。

 卒業後は「できればプロで頑張りたい」と進路を表明。次のステージこそ、怪物伝説をつくり上げる。【小杉舞】