<全国高校野球選手権:八頭6-1角館>◇16日◇2回戦

 春夏通じて甲子園初出場の角館(秋田)が、八頭(鳥取)に逆転負けした。1回に先制したが、右腕エース相馬和輝(3年)が3回に同点、5回に勝ち越しを許し、6回には4安打で3点を失って降板した。秋田勢は2年連続の初戦敗退となった。

 角館のエース相馬が動揺していた。1-2の6回。「走者が得点圏に進むと、どこに投げても打たれる意識があった。力んだ」と振り返った。1死二塁から単打、二塁打、単打と3連打を浴びた。速球を続けて痛打され、最後はスライダーを中前に運ばれた。3球とも真ん中に近いコースに入って3失点。ここで勝敗はほぼ決した。

 4回に伏線があった。八頭の左打ちの7番川田賢一郎(3年)に、自信を持って投げた直球を左中間に二塁打された。秋田大会では経験のない流し打ちの長打を浴びて「気持ちの切り替えができなかった。周りが見えなくなった」。自己最速を1キロ更新する143キロをマークしても、精神面の乱れで自分を見失った。勝ち越された5回は暴投が絡んだ。丁寧にコーナーを突く相馬の持ち味が、中盤から消えた。

 昨夏の秋田大会は決勝で秋田商に延長15回サヨナラ負け。全6試合を投げ抜いた相馬の右肩は悲鳴を上げた。痛みでボールを握れなかった時は、背番号10の右腕伊藤健也(3年)がカバーした。湯沢淳監督(39)も最後の夏を見据え、徹底的な走り込みを命じた。「(伊藤)健也に助けてもらい、ここまで投げられるようになった。先生(湯沢監督)にも感謝したい」と相馬は目を真っ赤にした。

 6回1死一塁から相馬を救援した伊藤も、悔しがった。強気に速球を投げ込んだが、8回に連打とスクイズで1点を失った。「今までのマウンドより1球1球の大切さを感じた場所でした」。2投手をリードした千葉天馬主将(3年)は「すぐに点を取れて、いいかなと思ったのに…」と肩を落とした。1回表に千葉の中前打で先制点を挙げた。秋田大会5試合すべて先攻で、3試合は1回に先制。この日も必勝パターンだったが、追加点が奪えなかったのが響いた。

 相馬は東都大学リーグでのプレーを希望する。「厳しい環境で自分を鍛えたい。プロ野球選手になるのが夢」と大きな目標を掲げた。初陣は飾れなかった角館だが、センバツ21世紀枠落選というショックも乗り越えてたどり着いた甲子園に足跡は残した。エースをはじめ、それぞれの選手が次のステージで新たな希望と目標を探し出す。【久野朗】