<全国高校野球選手権:沖縄尚学3-1作新学院>◇17日◇2回戦

 「琉球のライアン」沖縄尚学・山城大智投手(3年)が、3安打14奪三振完投で16強進出を決めた。作新学院(栃木)を破り、春夏通算甲子園20勝目(10敗)に到達。3回戦は二松学舎大付(東東京)と対戦する。

 今までに見たことがないライアンだった。沖縄尚学・山城は「この夏、甲子園の主役になりたい。甲子園は特別な場所。春から成長した姿を見せるために来た」と話す通り、圧倒的な存在感で作新学院をねじ伏せた。胸の高さまで左足を上げるフォームは変わらないが、最速143キロの直球、スライダー、直球と同じ軌道から鋭く落ちるツーシームとすべてを自在に操った。

 初回、左の3番朝山に直球をバックスクリーン右へ運ばれ先制ソロを許した。1点リードの6回2死二塁。再び朝山を迎え「2年生に直球を打たれたままではふがいない」と同じ直球で勝負し、見逃し三振を奪った。捕手の伊良部は「精神面の強さ、成長を感じた」と驚いた。

 センバツ準々決勝の豊川(愛知)戦が転機となった。先発し2回5失点KO。比嘉公也監督(33)は「相当、悔しかったと思う。それからのブルペンでの1球1球のひたむきさが変わりました。左打者への配球も良かった」と進化を認める。春3試合で打たれた18安打のうち13安打が左打者だった。この日の3安打もすべて左だったが、14三振中、10三振は左打者から奪った。外角ギリギリの球の出し入れを覚え、膝元へワンバウンドを投げられるようになり左嫌いを克服した。

 「試合中盤からお客さんがいっぱい入ってきた」と午前8時開始の第1試合で、途中から満員になるスタンドの風景を見る余裕もあった。野球に関してはストイックだが、普段は天然ボケを見せ、ナインから笑われる。先日も赤嶺主将がバイキング夕食終了の「ごちそうさま」をするタイミングでデザートを取りに行って笑われた。

 この日の勝利が沖縄尚学の甲子園20勝目だった。春は2度優勝も、夏は過去6度で2勝したことがない。「一戦必勝で全国優勝へ全力でいきたい」。今の山城なら夏初制覇に手が届くかもしれない。【石橋隆雄】

 ◆山城大智(やましろ・だいち)1996年(平8)9月26日、沖縄県今帰仁村生まれ。兼沢小1年の時、北山キングで軟式を始める。今帰仁中2年の時に全国4強。その時のエースは平良拳太郎(巨人)。昨夏は背番号12で甲子園2試合に登板。今夏の県大会準々決勝で最速147キロをマーク。球種はカーブ、スライダー、ツーシーム。176センチ、75キロ。右投げ右打ち。血液型A。