<全国高校野球選手権:聖光学院2-1近江>◇21日◇3回戦

 土壇場で聖光学院(福島)の仕掛けが次々にはまった。1点を追う9回。先頭が安打で出塁すると、4番安田が意表を突く初球セーフティーバントを決めた。さらに犠打で1死二、三塁と、リズム良く攻め続ける。県大会の打率10割の代打・海老沼の打球が、二塁手の野選を誘い追いついた。

 もう押せ押せだった。7番打者・石垣は、今大会絶好調。ベンチの指示が3球目でセーフティースクイズに切り替わると、一塁手がけん制に備えベース付近にいるのを確認。「そこへ転がせば大丈夫」(石垣)と成功を確信した。3球目の速球を狙い通りに一塁手の前へ転がして、劇的な逆転サヨナラ勝ちを決めた。福島大会決勝で9回2死から4点差を追いついた粘り強さは本物だ。

 「プレッシャーバント」の成果だ。内野4カ所に分かれマシン2台、打撃投手2人の近距離からの投球をバントする練習がある。セーフティーやスクイズは自己判断で、ウエストもされる。周囲から「決めなかったら負けるぞ」「できないなら外へ出ろ」と重圧をかけられ、失敗すれば腹筋などを課せられる。サヨナラのホームを踏んだ安田は「石垣はノーミスです」と、ナインが認める技術と集中力がある。

 チームは71年に準優勝した磐城に並ぶ福島最多の夏3勝を挙げ、4年ぶり3度目の8強入り。過去2度「4強の壁」に阻まれたが「日本一を成し遂げたい」。石垣の視線は東北勢の悲願、全国制覇に向いている。【久野朗】

 ◆福島県勢の1大会3勝

 71年磐城以来43年ぶり2度目。磐城はエース田村隆寿が○1-0日大一、○3-0静岡学園、○4-0郡山と3試合連続完封で決勝進出。決勝は桐蔭学園に0-1で敗れた。