<全国高校野球選手権:日本文理5-1聖光学院>◇22日◇準々決勝

 聖光学院(福島)が71年の磐城以来、福島県勢43年ぶりのベスト4入りを逃した。日本文理(新潟)に敗れた。1点を追う初回に同点にした打線は、2回以降無得点。力投する右横手投げエースの船迫(ふなばさま)大雅(3年)を援護できなかった。三たび「4強の壁」に泣いたが、チーム初の1大会3勝を挙げて大きな足跡を残した。

 9回裏2死4点差。最後の打者、4番安田光希(3年)の飛球が右翼手のグラブに収まった。福島大会決勝と同じ“ミラクル同点劇”再現を狙った聖光学院が、力尽きた。夏3度目の8強入りで、今年も「4強の壁」は破れなかった。それでも斎藤智也監督(51)は責めなかった。「初めて4試合経験させてもらった選手に感謝している。最大級にねぎらってやりたい」。

 船迫がエースの意地を最後まで見せつけた。8回被安打10の3失点でも、粘りの投球で大量得点を許さなかった。打線の援護が2回以降なかったが「上出来でした。甲子園は自分を成長させてくれた、いい場所」と胸を張った。福島大会後にシュートやチェンジアップをマスターして投球の幅を広げた。4試合に登板して防御率1・93。「こんな投球ができるとは思わなかった」と目を丸くした。2試合に先発した2年生右腕の今泉慶太と、8強入りの原動力になった。

 昨秋、チームはバラバラだった。県大会準決勝で日大東北に敗れ、県内公式戦の連勝が95で止まった。現3年生がまとまりを欠き、胸ぐらをつかみ合うこともあったという。斎藤監督から「ユニホームを着る資格がない」と東北大会後の約1カ月半、練習をさせてもらえなかった。

 2回戦で2打点の飯島翼(3年)は「同級生65人が仲の良いグループに分かれ、ほとんど口を利かない選手もいた」と振り返る。毎日3、4時間の選手だけのミーティングを繰り返し、意見をぶつけ合った。ようやく「全国制覇を狙おう」と意見が一致して、斎藤監督に練習再開を許可された。飯島はしみじみと言った。「あそこでつらい思いをしてよかった。それが喜びに変わった」。

 1年近くたったこの夏、71年磐城の福島最多記録に並ぶ1大会3勝を手にした。4強入りと全国制覇は1、2年生に託される。9回に2者連続押し出し死球と乱れた今泉は、次期エース候補。「最後の最後で(試合を)ぶち壊した。また戻ってきたい」と目を真っ赤にしながら誓った。来春のセンバツ、智弁和歌山を抜く戦後最長の9年連続夏の甲子園出場へ、聖光学院の新たな戦いが始まる。【久野朗】