いざ甲子園へ!

 第87回選抜高校野球(3月21日開幕、甲子園)の出場32校の選考委員会が23日、大阪市内で開かれ、大曲工(秋田)が春夏通じて初めての出場が決まった。63年の創部から53年目。昨秋の東北大会準優勝の実績を評価された。選手たちを祝い、花火が約30発打ち上げられた。

 ド派手な演出だ。大曲工の初めての甲子園出場を祝ったのは、約30発の打ち上げ花火だった。日本一といわれる大曲花火大会。同校の同窓会が企画し、真冬のグラウンドの上空を焦がした。創部53年目でつかんだ夢舞台。あいさつで歴代の野球部部長やコーチらの名前を口にした就任19年目の阿部大樹監督(43)が実感を込めた。「涙が出そうになった」。

 夏の秋田大会など何度もV候補になりながら、甲子園には届かなかった。だが現チームは「明るく粘り強く頑張れている」と阿部監督は評価する。昨秋の東北大会は準々決勝で花巻東(岩手)と延長15回引き分け再試合を経験。その再試合は3本塁打と自慢の「花火打線」が爆発すれば、準決勝の鶴岡東(山形)戦は8回裏に逆転勝ち。土壇場での集中力も兼ね備え、センバツ出場をたぐり寄せた。

 東北大会で東日本大震災後の現状を目にした。メーン会場になった石巻市民球場の右翼席後方には約1000の仮設住宅が並ぶ。震災被害のなかった選手たちは、厳しい生活を強いられている被災者の気持ちを考えた。主に8、9番打者を務め、花巻東との再試合で2打席連続アーチをかけた鈴木平(2年)は「自分たちが謙虚になれた。野球ができる幸せを感じた」と明かす。阿部監督も「一生懸命やろうという、まとまりが出た」と話し、準優勝の1つの支えになった。大曲工を応援した石巻の人々もいたという。

 エースで4番の武田龍成(2年)は「少しでも勇気と感動を与えられれば」。阿部監督も「何かしら元気を与えられる野球を。勝利が一番だと思う」とチームの考えは同じ。秋田だけではなく被災地への思いも胸に秘め、大曲工は甲子園1勝を目指す。【久野朗】

 ◆大曲工

 1962年(昭37)創立の県立校。生徒数は416人(女子56人)。野球部は63年に創部。部員数は41人(マネジャー2人含む)。主なOBは元メッツマイナーの後松重栄。陸上部や吹奏楽部なども盛ん。所在地は大仙市若葉町3の17。草なぎ康尚校長。※なぎは弓ヘンに前の旧字の下に刀