<オープン戦:東海大4-0東海大相模>◇9日◇東海大グラウンド

 今秋ドラフトの1位候補、東海大相模(神奈川)一二三(ひふみ)慎太投手(2年)が異例の国内10球団スカウトの熱視線を浴び、21日開幕のセンバツへ向けて本格投球を披露した。格上となる東海大とのオープン戦に先発し、練習試合解禁2日目にして完投。最速143キロで8回142球を投げ抜いた。8安打8四死球で0-4と敗れたが、随所に大器の片りんを見せた。00年以来のセンバツVへ、早くもエースがエンジン全開だ。

 試合開始時、気温2度前後だった寒風を、一二三の直球が切り裂いた。1点先制された直後の5回、先頭打者を2球で追い込むと「おりゃっ」と叫び、腕を振る。外角いっぱいの直球で見逃し三振。「最後まで投げたかった」と、志願の完投で142球を投げ抜いた。この日の最速は143キロ。吹き荒れる強風、練習試合解禁2日目、格上相手と重なるマイナス要素を考えれば、高校生としては驚異的なスピードだった。

 前日8日の山梨学院大付戦は2回1失点の試運転だったが、7回1死一、二塁では大学生のバットをへし折って併殺打に仕留めた。ネット裏には巨人、中日、ヤクルト、阪神、広島、日本ハム、ソフトバンク、西武、ロッテ、オリックスの10球団が集結。阪神菊地東日本統括は「1球1球は一級品。1位でいなくなる」と評価。ソフトバンク笹川スカウトも「ものが違う。この時期に、こんなボールを投げる投手はいない。すべての球種がカウント球にも勝負球にもなる」と目を見張った。

 直球に加えカーブ、スライダー、フォーク、さらにチェンジアップを要所で沈めた。それでも本人は不満顔だ。寒さで手元の感覚が鈍り、8四死球。「今のままでは通用しない」と反省が口をついた。

 実戦感覚を磨くため、1月以降紅白戦を約15試合こなした。2月後半は4日間で1400球を投げ込んだ。「完投した後の疲れ方が違う」と成長は実感している。昨秋は右手人さし指のツメを割った状態で関東王者になった。「力が抜けて良かった。(ツメを)取っちゃおうかな」と、荒療治を示唆するほど、勝利に対する執念が出てきた。

 味方失策もあって4失点ながら、自責点は2点でまとめた。次戦先発は14日の日体大戦予定。「1分1秒を惜しんで、追い込んでいきたい」と引き締める。00年以来の優勝を目指すセンバツは21日に開幕。“東の横綱”のエースが紫紺の大旗を見据え、調整を進めていく。【前田祐輔】