<センバツ高校野球:広陵1-0宮崎工>◇29日◇2回戦

 春に強い広陵(広島)が、劇的サヨナラ勝ちで8強進出だ!!

 0-0の9回裏無死満塁から6番の三田達也(2年)が中前に運び、宮崎工との息詰まる投手戦にケリをつけた。2安打完封したエース有原航平(3年)の好投に応えようと、チーム一丸で勝利をつかんだ。31日の準々決勝は春最多タイ4度の優勝を誇り、夏春連覇を狙う中京大中京(愛知)が相手。さあ、名門対決を制し、7年ぶり4度目のセンバツVに前進だ。

 たたきつけた打球が二遊間を抜けて中前に飛んだ。人生初のサヨナラ打を見届けると、三田は右拳に力を込めた。一塁を少し回り、もう1度ガッツポーズが飛び出した。スコアボードに9回表まで「0」が並んだ投手戦。9回裏に先頭の3番蔵桝が中前打、4番丸子が左中間二塁打で無死二、三塁。「自分に回って来い」。願いが通じ、5番御子柴が敬遠されて満塁。打席に入った悩める2年生が、大接戦に決着をつけた。

 三田にとって、これ以上ない名誉挽回(ばんかい)の機会だった。3番三塁手で出場した22日の立命館宇治(京都)との1回戦で、甲子園の怖さを思い知らされた。初回、エース有原が簡単に2死を取った。だが、ここからが悪夢。三田の失策から一挙に4失点。初めて味わう雰囲気にのまれ、送りバントを失敗するなど無安打。7-6辛勝の流れをつくってしまった。

 中学時代にヤングリーグ「姫路アイアンズ」で全国優勝を経験したこともあり、中井監督も期待を寄せる。凡ミス連発にも「(2年の)三田はこれからの選手」とかばう半面「次で取り返してほしい」と奮起を促していた。

 チームのことを考えた三田は1回戦の後、中学時代など経験の豊富な外野を志願。右翼手だった徳田とポジションを入れ替わり、6番で2回戦に臨んだ。8回の三ゴロ併殺など軽快にこなした徳田は「この方がお互いに楽でしょ」と後輩を気遣う。プレッシャーから解放された三田は、第1打席で送りバントをきっちり決め、リズムをつくった。そして最後は、相手エース浜田の配球から「初球は真っすぐが来る」と確信し、自らのバットで8強進出を決めてみせた。

 2失策にけん制死、走塁死などミス連発の1回戦から1週間。7安打6失点と乱調だった有原も、2安打完封と復活した。中井監督も「選手がよくやってくれた。三田もうまくいったし、有原の完封は大したもの」と目を細める。4強入りをかける相手は、東邦(愛知)と並び春最多4度の優勝を誇り、夏春連覇を狙う中京大中京だ。だが「広陵らしさが出た勝利」と福田主将が胸を張るように、臆(おく)することはない。4度目の「サクラ満開」へ、着々と前進している。【佐藤貴洋】