<全国高校野球選手権:智弁和歌山3-0済美>◇2日◇1回戦
坂口が猛打賞で凱旋(がいせん)した。第90回全国高校野球選手権大会が2日、甲子園で開幕した。春夏連続出場の智弁和歌山が、主砲・坂口真規内野手(3年)の3安打と岡田俊哉投手(2年)の完封で快勝。高嶋仁監督(62)は甲子園の通算勝利数を54に伸ばした。
坂口は足の指に力を込めた。3回2死一塁の2打席目、主砲は初心に戻った。「それまで両足のかかとに力が入っていた。甲子園の砂をかむ感じで打席に立ちました」。2球目の外角スライダーに手を伸ばすと、低弾道の白球はフェンスまで到達。一塁走者勝谷を返す先制打となった。
「足の指で土をかむ」は、強打者坂口の原点だ。入学当初はパワーを生かせず、三宅秀二部長(43)は「まるで氷の上で振ってるように、下半身がぶれていた」と振り返る。転機は昨春、テレビで眺めていたプロ野球広島のキャンプだ。下半身強化のために足袋をはく選手を見て「やってみよう」。実家にあった地下足袋を練習に持ち込み、打撃の軸が定まるようになった。昨夏の甲子園では仙台育英・佐藤由規(現ヤクルト)から本塁打。高校通算25発は、細い指先の踏ん張りから生み出された。
6月中旬に右くるぶしを疲労骨折。この日も試合前に痛み止め注射を打ち、「試合終盤は足がグラグラした」という。足をかばううちに、微妙な感覚を失っていた。「試合の中で修正できたことがこの1年の成長。落ち着いているからできたんだと思います」と胸を張った。
5回無死一塁では低めスライダーを左翼線に運び、7回1死からは中前打で好機をつくった。期待された一発こそ出なかったが、コンパクトに振り抜き4番の働きを見せた。それでも笑顔を見せない坂口の心中を母文枝さん(40)が明かす。「目標を達成するまで笑わないと言ってました。優勝の時まで、とっておくつもりですよ」。豪快な打撃と繊細な心で、坂口の夏舞台が始まった。【近間康隆】


