<全国高校野球選手権:横浜6-5浦和学院>◇7日◇1回戦

 横浜(南神奈川)が浦和学院(南埼玉)との関東勢対決を制した。不振で7番に降格した主砲の筒香嘉智内野手(2年)が、復活の先制2ランを含む4打点の活躍で6-5で勝利した。

 弾丸ライナーの打球は、浜風に逆らうように右翼席へ一直線に飛び込んだ。2回2死二塁。7番筒香がカーブをとらえ先制2ランを放った。5月以来の公式戦5本目、通算31号だった。「あれが自分の打撃です。ここ(甲子園)で出てよかった」。よみがえった大砲が、ホッとした表情で口を開いた。

 今春センバツでは「3番三塁」を任された大型野手は、「7番一塁」で甲子園に戻ってきた。南神奈川大会ではわずか3安打、打率1割6分7厘しか打てなかった。小倉清一郎部長(64)が「うちの歴代の選手で飛距離NO・1」と絶賛する一方で、こうつけ加える。「練習で飛ぶミスターフリー打撃です」。今春、同高グラウンドの右翼ネットが高さ10メートルから5メートル「上乗せ」された。筒香の打球がマンション3、4階部分に再三ぶつかるからだった。名付けて「筒香ネット」。ところがこれができて沈黙した。

 筒香は今大会を前に、不振を極めた南神奈川大会のビデオを繰り返し見て、フォームの修正を決断した。右足を上げてタイミングをとっていたものを、昨秋の「すり足打法」に変えた。「足を上げることで目線がブレていたんです。間もとれるようになりました」。8回には外角速球に逆らわず、流し打ちの2点適時打も放った。

 渡辺元智監督(63)は「筒香の1発がなかったら勝てる試合じゃなかった」と復活弾を評価した。スタンドでは筒香の実家、和歌山から駆けつけた両親が喜んだ。父和年さん(55)は「日本に2家族しかない名前。悪いことはできませんから」と笑った。

 横浜は10年前、松坂(レッドソックス)を擁して全国制覇した。記念大会には強い。そこに大砲が戻ってきた。小倉部長は「クリーンアップに戻したい」と話したが、筒香は「打順は関係なく、自分のバッティングを心がけます」。その顔は自信にあふれていた。【米谷輝昭】