<全国高校野球選手権:仙台育英4-1菰野>◇8日◇1回戦

 仙台育英(宮城)のプロ注目打者、橋本到外野手(3年)が5打数5安打の大暴れだ。昨夏のエース、ヤクルト由規(18=佐藤由規)の魂を受け継ぎ、プロ注目右腕、西勇輝投手(3年)率いる菰野(三重)を4-1で破った。

 橋本のバットが、第1打席から火を噴いた。カウント0-1からの2球目。「(第1打席の)ファーストストライクはいつも本塁打を狙う」と、迷うことはなかった。今大会注目の右腕、西が投じた外寄り高めの直球をたたく。ライナーで左中間を破ると、50メートル走6秒0の俊足で一気に三塁を陥れた。佐々木順一朗監督(48)は「あの一打がいつまでも相手を苦しめた」と勝因に挙げた。

 守備でもスタンドを沸かせた。3回1死二塁、右中間の飛球を好捕。タッチアップする走者を見ると、すぐさま三塁へダイレクト送球。遠投120メートルの強肩から繰り出された送球は、三塁手のグラブをはじくほどの「レーザービーム」。タイミングはアウトだったが走者を刺せず、「少し抜けた感じだったんです」と不満顔だった。

 俊足巧打に好守、強肩と能力を存分に見せつけた。佐々木監督が「ものすごい選手」と常々たたえる、東北NO・1の好打者。巨人大森スカウトは「玄人好みする選手。赤星(阪神)のように育つ素材」と称賛した。

 三塁打は昨年春、夏に続き3大会連続で放った。当時は1学年上の由規(ヤクルト)がエース。3月末、チームに寄贈された打撃マシンで打ち込んだ成果でもあった。今でも連絡をまめに取り合う。春の地区大会で10打数連続無安打と絶不調に陥った。「心配してくれました」(橋本)。慣れ親しんだ聖地で、プロ注目右腕から一気の爆発。「由規さんをずっと見てきたから打てたと思う」と感謝した。先輩が幾度も立ったお立ち台にも上がった。「光栄です。でも次を勝てば(由規を)超せる。スターがいなくてもやっていけること見せれば、恩返しになる」と、由規が果たせなかった1大会での2勝を目指す。【清水智彦】