<高校野球秋田大会>◇14日◇2回戦

 初の甲子園を狙う秋田西が、春王者で第1シードの秋田商に8-1で8回コールド勝ちした。エース右腕の三浦大和(3年)が8回3安打1失点(自責点0)と好投。昨秋の秋田商戦で9失点したリベンジを果たし、亡き父にも勝利をささげた。

 8回1死。秋田商の麻生真遊撃手(2年)を空振り三振に仕留めた6球目が141キロを計測した。三浦は最終回でも疲れを見せず自己最速を3キロ更新。同イニングの3三振もすべてスイングアウトだ。中学までは内野手で、昨夏も背番号3だったエースが、春の東北大会8強を最後まで圧倒した。

 校歌を歌いながら、うれし泣きした。昨秋の中央地区予選。三浦の9失点降板で秋田商に1-11で惨敗した。母和歌子さん(38)が「家でも大声を上げて泣いていた」と明かすように、完ぺきに打ちのめされたが「組み合わせが決まった瞬間からリベンジに燃えてました。前夜は緊張して胸が苦しかったけど、勝ててホントうれしい」と三浦。今度の涙は格別だった。

 両親にささげた勝利でもあった。小学6年の秋、トラック運転手の父繁さんが交通事故で他界した。その1週間前、多忙で会えない繁さんと久々にキャッチボールをし「うまくなったな」と褒められた。直後の悲劇-。告別式で三浦は「野球を教えてくれた、お父さんのためにプロ野球選手になります」と宣言。父との約束のためにも、繁さんの死後、トリマーの資格を取って育ててくれた母のためにも、負けられなかった。

 同校にプロから調査の電話は入っているが、本格的な視察はまだ。三浦は「夢をかなえるために絶対に甲子園に出たい」。秋田商を下し、次戦は一昨年優勝の金足農だ。強豪と連戦するが、今春の中央地区予選で明桜を下した名門キラーは物おじしない。甲子園出場でプロへの道が開くと信じて、突き進む。【木下淳】