<高校野球山形大会>◇17日◇3回戦

 山形に「雄ちゃん」がいた!

 日大山形・佐藤雄介投手(3年)が新庄北から毎回の21三振を奪い4-0で完封。最速142キロの直球とスライダーで相手打線を寄せつけない。

 最高気温33度とうだるような暑さの山形で、佐藤雄の爽快(そうかい)な奪三振ショーが繰り広げられた。「ウシッ」。うなり声のような声が、スタンドにまで聞こえてくる。身長177センチ、オーソドックスなフォームから右腕を振り抜くと、キレのあるボールがミットに吸い込まれていく。序盤から記録の予感がした。2回。5番から続く右打者3人に対し、追い込んでからスライダーがさえた。鋭く外角に逃げていく得意球で3者連続三振。夏の甲子園に2度出場の相手を散発4安打に封じ込めた。

 6回2死からは圧巻のショータイムと化した。次から次へと、7者連続三振。自己最速144キロの直球は142キロ止まりだったが、8回でも140キロ台を連発するなど、スタミナ十分だった。129球を投げても「楽しかった。真っすぐと変化球がいいところに決まったので(21個も)いけました」と余裕たっぷりに笑った。

 この日はプロのスカウトも見当たらず、全国的には無名といっていい存在。昨夏も登板し、秋からエースナンバーを背負ったが、今春は不調ではく奪された。「1番は信頼がないとだめ」という荒木準也監督(37)から与えられた試練に奮起。「みんなから信頼されるために、打たれても顔に出さないようにした」と、精神面の成長で再び背番号1を勝ち取った。

 12日の初戦、山形城北戦では12安打を浴び、荒木監督から「ヘボピッチャー」と突き放された。「見返したかった」という一念で、エースの意地をみせつけた。ショック療法が功を奏した荒木監督も「今日は投手に尽きる。三振は取りすぎだけど」と、快投した右腕をたたえた。

 負けられない理由がある。大会開幕直前の9日、祖父寔(まこと)さん(享年83)が病気で亡くなった。今年1月、「甲子園に見に行きたいから連れていってくれ」と頼まれていた。勝利の瞬間、天に向かって拳を突き上げたのは「天国のおじいちゃんに知らせたい意味もあった」と、遠くを見つめた。甲子園で躍動する姿を見せるためにも「全試合登板して、勝ちに導いて甲子園に行きます」と頂点までのフル回転を誓った。