<高校野球広島大会>◇29日◇準決勝

 広陵は有原航平投手(2年)が7安打1失点12奪三振の力投。広島商を2-1で下し、3年連続20度目となる夏の甲子園出場へ王手をかけた。また、春優勝で第1シードの如水館は、山陽に延長10回3-2サヨナラ勝利を飾った。決勝は31日、マツダスタジアムで行われる。

 高校球児の特権か。有原の成長が止まらない。投手戦で2-1の9回表2死。広島商の代打・植木竜海(3年)を、切れ味鋭いスライダーで空振り三振に仕留めると、有原は185センチの長身から投げ下ろした右手を力強く握り締めた。「狙っていました」という12個目の三振。3回1/3で降板した初戦の福山葦陽戦から2週間あまり。マウンド上の背番号「10」は、誰もが認めるエースに成長した。

 この日はあいにくの天候となったが、旧広島市民球場の内野席は立ち見も出るほど。有原は得意のスライダーで奪三振ショーを演じ、詰めかけた“高校野球通”を何度もうならせた。失点は「ストレートがシュート回転して真ん中に行ってしまった」と悔やむ、川野友耀(3年)のソロ本塁打のみに抑えた。

 有原の成長ぶりに中井哲之監督(47)も「いきなりスライダーが良くなったよ」と苦笑いする。雨天順延した27日の4回戦・三原戦こそ緊急回避したが、有原は今大会5試合に登板。2回戦・吉田戦では11回を1安打完封するなど、36回2/3を投げ34K。防御率0・25の大黒柱だ。3打数3安打とバットでもエースを支えた主将の石畑桂佑捕手(3年)は「有原はストライク先行でリードしやすかった」と振り返った。

 3年連続20度目の夏の甲子園出場まであとひとつ。「如水館の方が力は上。ただ接戦に持ち込めば勝機はある」と中井監督。前日の準々決勝・呉港戦では1年生4番・丸子達也内野手に待望の1発が飛び出た。不振続きでも起用する。甲子園通算24勝(10敗1分)の名将は「甲子園で勝てるチーム」を掲げる。今大会はノーシードだった広陵だが、成長を描きながら今年も決勝の舞台にたどり着いた。【佐藤貴洋】