<全国高校野球選手権:東北8-2倉敷商>◇13日◇1回戦

 春夏通算39度の出場を誇る名門・東北(宮城)が、全国の舞台で復活した。倉敷商(岡山)に8-2と圧勝し、4年ぶりの甲子園勝利。たたきつける打撃を心がけ、9安打8得点という効率の良い攻撃で、序盤から主導権を握った。部員の不祥事による監督交代で昨年11月から指揮を執る我妻敏監督(27)にとっても、甲子園での同校史上最年少監督勝利。青年監督ならではの掌握術で、ナインを勝利に導いた。

 夢舞台を心の底から楽しんだ。偉大な先輩たちが何度も踏んだ聖地の土も、今のナインにとっては初体験の夏。だが緊張は感じられない。「ここまで来たら、緊張することはない」。試合前の我妻監督の言葉が、選手たちを緊張から解きほぐした。

 初回、切り込み隊長の1番佐野太地中堅手(3年)が快音を発し中前へ運ぶ。これで「よし、いける」という風がベンチに流れた。そして「マグレです」と我妻監督が話す、圧巻の2回の攻撃。5長短打に相手のミス(野選)やスクイズも絡めた、打者一巡の猛攻で一挙6点。2死満塁から強烈なゴロで、右翼線へ走者一掃の二塁打を放った国島一平二塁手(3年)は「全打席、強いゴロを打つことを心がけた」とチーム最多の4打点に胸を張った。

 我妻監督が取り組んできた成果だった。昨年9月に部内暴力事件が発生。6カ月間の対外試合禁止処分で実戦が積めず、練習も3カ月自粛したため、打撃は伸び悩んだ。「もう長打力は見込めない」という判断から「強いゴロ」を普段の打撃練習から徹底させた。身長182センチで長距離砲にみえる国島でさえも「とにかく食らいつく」と長打は頭にない。

 青年監督は、浮かれムードに手綱を締めることも忘れない。序盤に大量リードする展開に中盤、選手たちの大振りが目立ち始めた。就任わずか8カ月半の我妻監督だが、そこも見逃さない。5回終了後「それが、おまえらのやってきた野球か!」と引き締める。3安打2打点の佐野も、県大会では2割2分7厘と不調だったが「決勝戦前に『思いっきり振るだけでいいぞ』と監督に声を掛けられたから吹っ切れた」と、同決勝では1安打を放ち復活へとつなげた。

 「試合前、本当は私が一番、緊張してたんです」と我妻監督。同じ目線に立つからこそ選手たちの気持ちが分かる。処分のハンディを逆手に取り「強いゴロ」という武器に変えた。同校監督史上、最も若い甲子園勝利にも「皆さんのおかげ」と控えめ。心優しき監督に包まれた東北ナインが、野球ができる喜びを胸に、1歩ずつ全国の階段を駆け上がる。【三須一紀】