<全国高校野球選手権:花巻東4-1東北>◇20日◇3回戦

 今秋ドラフトの超目玉、花巻東(岩手)菊池雄星投手(3年)が、自己最速を2キロ更新する155キロをマークした。東北(宮城)との「みちのく対決」で125球を投げ抜き、6安打9奪三振1失点で3試合連続完投。球場表示は154キロだったが、ロッテスカウトのスピードガンで左腕投手甲子園歴代2位の155キロを計測した。4-1で下し、同校初、岩手県勢41年ぶりの8強進出に導いた。明豊(大分)今宮健太内野手(3年)も自己最速の153キロをマーク。3安打とプロ注目の打撃も好調で、21日の準々決勝は両雄が直接対決する。

 マンモス甲子園が揺れた。5回2死、菊池は1番佐野に対し、こん身の直球を続ける。その3球目。高めに抜けた球に、バックスクリーンが153キロを表示した。自己最速タイだ。これで終わらない。カウント2-2からの7球目。ファウルされた直球に、自己最速となる154キロの表示が点灯した。一塁側アルプス席に続き、内野席からも拍手がわき起こった。「決めにいったボールだったんですけど、自分でもびっくりしました。気持ち良かったです」とほおを緩めた。

 この1球は、ロッテ松本スカウトのスピードガンでは155キロを計測。「力んでバランスを崩したらダメなので。スピードのことは忘れようと、自分に言い聞かせました」と、自分を見失うことはなかった。8球目を三塁内野安打とされたが、低めを突く投球で後続を断った。7回からは安打すら許さない。9回1死から投じた118球目に、再び154キロを計測する圧巻の投球だった。

 体調が良かったわけではない。「うまく力も抜けていて、今日の投球が一番良かったです」。2回戦まで計242球を投げ、左肩には軽い張りがあった。前日19日の投球練習中。右足を上げた際にタメをつくると「意外としっくりいきました」と、手応えをつかんでいた。

 微妙なフォーム修正が快投につながったが、目標の存在を目指して積み重ねた努力が、さらなる進化を生んだ。中3の春。県外進学も考え、仙台育英(宮城)の練習見学に訪れた。寮に案内されると、当時2年だった由規(現ヤクルト)が親切に案内してくれた。地元の花巻東に進学したが、1年夏の甲子園で再会。開会式で「なんで育英に入らなかったの」と残念がられた。

 今春センバツで152キロをマークした際に「体の力が抜けていた。由規さんも言ってたけど、体がふわっと浮く感じで、今までない感じだった」と不思議そうに振り返った。「球のスピードも、さわやかなルックスもかなわないけど、由規さんに1歩でも近づきたい」。夏の聖地で見せた進化の裏には、甲子園で156キロの剛速球をたたき出した“先輩”の存在があった。

 東北地区の高校野球をけん引してきた東北を破り、県勢では夏の甲子園41年ぶりのベスト8進出。新たな歴史を次々とつくる左腕は21日の準々決勝で、センバツで戦った明豊を迎え撃つ。「いい打者もそろっていて、そう簡単には勝てないと思う。春のことは忘れて、新しいチームに挑む気持ちで戦いたい。優勝するために、ここに来ているので」と気を緩めることはない。尊敬する由規も成し得なかった全国制覇へ、あと3勝。怪物が頂点へ突き進む。【由本裕貴】