<高校野球南北海道大会>◇1日◇2回戦◇室蘭地区予選

 最速146キロ右腕が、初の南北海道大会出場に王手をかけた。白老東が鵡川を7-3で撃破。右ひじ痛に苦しむプロ注目のエース平田晃基投手(3年)が今夏の初先発で、7回4安打2失点(自責0)の力投を見せた。3日の代表決定戦では、87年創部以来、3季通じて初の道大会出場をかけ、苫小牧工と対戦する。

 試合後、もう険しい表情はなかった。白老東の平田晃は、般若(はんにゃ)面のように顔をしかめたマウンドから一転、球場脇で満面の笑みがこぼれた。右ひじの痛みに顔をゆがめながら90球、7回2失点。「自分の野球人生が終わっても、このチームとやれるのが幸せだと思っている」と言い切った。

 春季大会で右ひじ痛を発症した。練習試合の登板もなく迎えた6月28日の初戦(対厚真)は、9回から登板も3連打を浴び降板。状態はさらに悪化した。この日まで2日間、キャッチボールも行わない完全ノースロー。試合前には苫小牧市内の病院で痛み止めの注射も打った。「仲間と一緒のグラウンドに立っていたい」。気力だけは失わなかった。

 初回に矢尻考輝一塁手(3年)の先制2ランで援護を受け、リズムに乗った。「球は走っていなかったけどコントロールを意識した」。ひじの負担を考慮し、イニング間の投球練習もしなかった。最速146キロだが、この日は巨人スカウト陣のスピードガンで141キロ止まり、奪三振は3つ。それでも四球1個と制球重視で、春季大会の雪辱に燃えていた難敵鵡川を返り討ちにした。

 「5、6回から痛みが出た」と話し、7回終了時に降板を自ら申し出た。2戦連続で弟隆二(2年)との兄弟リレーとなったが、笹原明男監督(42)は「最後の投げ方、顔の表情を見ると痛いのかなと思ったけど、あそこまでよく放ってくれた」と大黒柱の奮闘をたたえた。

 仲間には「ひじが壊れても勝つ気で投げる」と宣言した通りの熱投で、代表決定戦進出に導いた。苫小牧工戦に向け「弟と(登板が)交互になるかもしれないけど、今日みたいな投球ができれば通用する」。お笑いコンビ「はんにゃ」の金田哲似でムードメーカーの怪腕が、気力を振り絞りマウンドに上がる。【村上秀明】