<高校野球大分大会>◇15日◇1回戦

 中津商の147キロ右腕、奥村政稔投手(3年)がまさかのコールド負けで初戦敗退した。三重総合との1回戦は5回に8失点し、0-10の6回コールド。来春廃校となるため、3年生10人で上位を目指したがラストサマーを勝利で飾れなかった。

 あまりにも短く、あまりにもあっけなかった。1時間42分、6回コールドでエース奥村、そして中津商の最後の夏が幕を閉じた。

 雨で3日間のスライドで微妙に手元が狂った。ブルペンではいつもより20球多い70球を投げて調整したが「直球でもストライクが取れず、変化球でも空振りが取れなかった」。変化球を徹底して見逃してきた相手打線にも戸惑い、5回には3四死球と3連打含む5安打で大量8失点。さらに6回には足でかき回されて1失点。それでも直球は144キロを計測し8三振を奪った。昨秋の県大会初戦でノーヒットノーランを達成し一躍注目を集めた最速147キロ右腕を見ようと、5球団のスカウトがネット裏に集まった。だが、本来の力を発揮できずに終わった。

 来春で学校が廃校になるため在学するのは3年生だけ。学内の男子生徒13人中10人が野球部員だった。野球部の最後の夏を後押ししようと、全校生徒が応援に来てくれた。安打が続いた5回途中にはベンチから「代わるか」と声をかけられたが「まだ投げます」と答えた。とうとう背番号10の三好琢也(3年)がベンチを出てきたが「どうしても最後まで投げさせて」とベンチに戻した。中津商の最後のエースとして、最後までマウンドにいたかった。

 「気持ちと球がかみあわなかたのかな」と恒成徳二郎監督(60)は気遣う。苦い思い出だけが残った最後の夏。「この先も野球を続けます。今日の試合は一生忘れないと思います」。卒業後は進学を希望している。中津商のラストエースは悔し涙で目を潤ませながら、最後の夏に別れを告げた。【前田泰子】