<高校野球静岡大会>◇18日◇2回戦

 8年ぶり甲子園へ、興誠が乗ってきた。昨秋県大会覇者の静岡商を5-3と逆転で破った。2回まで2失点の先発・森嵩道投手(3年)が尻上がりに粘りを発揮するうちに、打線が4回に小林靖也内野手(3年)の左前打で逆転。最後まで流れを渡さず振り切った。

 伝統の優勝候補を撃破した。興誠ナインの笑顔がはじけた。歓喜に沸く応援団、OBが待つ一塁側スタンドに絶叫しながら駆け寄り、喜びを分かち合った。夏に静岡商と対戦するのは63年以来4度目で、初めて勝利を手にした。

 2点を追う4回。高校通算26発の寺嶋寛大捕手(3年)のチーム初安打がきっかけだった。同点として2死一、二塁。小林が打席に立った。マウンドのエース渋谷の内角直球を振り抜き、左前に勝ち越し打を放った(得点の記録は走塁妨害)。試合前、寺嶋と午前5時から打撃練習を行って球場入りした。「朝練コンビ」での逆転劇を完結させた小林は「寺嶋がきっかけをつくってくれていた。自分で決められてよかったです」と笑った。

 先発の森は、序盤に2失点したものの3回以降は4安打1失点で、公式戦初完投した。両足をつりながら、186球を投げ抜いた。大会前、エース良知広大(3年)の右ひざの故障により任されたマウンドだった。「自分でも完投なんてできると思っていなかった。自信になった」と胸を張った。

 今春、地区大会2回戦で常葉菊川に4-5と競り負けた。悔しさからはい上がり、成長した姿を大一番で見せ、大きなヤマ場を乗り越えた。村松俊明監督(50)は「緊迫した試合の中で選手たちはよくやってくれた。ここが大きなポイントだった。この勝ちは非常に大きい」と話した。勝ち上がれば、大会終盤には良知も戻ってくる。そうなれば、さらに興誠!

 8年ぶり甲子園に手が届く。【前田和哉】