<高校野球兵庫大会>◇19日◇3回戦

 主な高校生の最多本塁打を記録する神港学園の伊藤諒介三塁手(3年)が、高校通算93号を含むサイクル安打を達成した。1回、スカイマークスタジアムの右翼席中段まで運ぶ推定130メートルの先制2ランを放ち、4打数4安打2打点の活躍で5-1と小野を下し、4回戦に進出した。

 右翼手が飛び込んだグラブの先を打球が抜けていった。伊藤が加速をつけて二塁を回る。ほんの十数分前、ふくらはぎがつった右足にも必死に力を込め、三塁に滑り込んだ。9回2死で達成した公式戦初のサイクルヒット。「やってもうたって感じです。チームが勝てたからうれしい」。うれしそうにほおを緩めた。

 まさに独壇場だった。幕開けは、すさまじい1発だ。1回、真ん中のストレートをとらえた。グングン伸びた打球は、両翼99・1メートルの右翼席中段へ。推定130メートル弾は、自ら持つ高校記録を更新する通算93号。「力みなく、いい感じで振れた。1本出てだいぶ楽になりました」。待望の今夏公式戦初アーチで肩の荷が下りると、3回に二塁打、5回には安打をマーク。だが、その直後に思わぬハプニングが起こった。

 7回2死の守備で、三遊間のゴロに飛び込んだ瞬間、右足がつった。顔をしかめグラウンドにうずくまった。心配した北原光広監督(57)が駆け寄り、すぐに仲間に背負われてベンチへ。交代を覚悟した。が、大会関係者から塩分補給のために梅干し2個をほおばるように勧められ、体をひねるストレッチをしてもらうと、痛みは消えた。「もう無理やって思ったんですけど、良かったです」。治療のため11分の中断後によみがえり、最終打席の歓喜につなげた。

 重圧を乗り越え強くなった。6月、前高校記録保持者の中田翔(現日本ハム)を超える88号が出るまで12試合ノーアーチ。「すごいプレッシャーだった。でも、そのおかげで強くなれた。もう慣れました」と笑う。「今年は負けたら終わりだから」と集中力も高まってきた。「これで乗っていってほしい」と北原監督。指揮官の思いは、ナインも同じ。期待してくれるチームメートのために、最後の夏も伊藤はアーチを量産していく。【木村有三】