<高校野球宮城大会>◇20日◇4回戦

 第1シード仙台育英は白石に1-0の辛勝。熱中症の影響で入院中の143キロ右腕・田中一也を欠く中、親友のエース左腕・木村謙吾(ともに3年)が公式戦初完封で8年連続49度目の8強へ導いた。

 病床の親友のために-。エース木村が完ぺきな投球で仙台育英の窮地を救った。18日の古川工戦。熱中症のため3回でマウンドを降りた田中は現在も仙台市内の病院に入院中。田中-木村の継投で勝ち進んできた「勝ちパターン」はできない。「自分が1人で投げる。そう切り替えました」。満を持してエースが先発のマウンドに立った。

 まったく緊張はなかった。味方打線が「謙吾を楽にさせたい」「田中のために」と空回りし散発5安打の中、エースは普段通りの投球を続けた。援護はわずか1点でも「動揺とかはなかったですね」。危なげなく5安打11奪三振。公式戦初の完封勝利で緊急先発を締めた。

 親友から送られてきたメッセージが大きな力になった。早朝6時30分、田中から1通のメールが届いた。「今日頑張ってくれ」。力強く返信した。「この大会は任せておけ」。佐々木順一朗監督(50)も「症状が回復すれば戻ってこられる。それを願うだけ」と心配する。1-0とヒヤヒヤする展開だったが木村の奮起で田中にもチームにも大きな白星をもたらした。

 「嫌なイメージがよぎった」という井上信志主将(3年)。昨夏はエース穂積優輝(日体大1年)が大会途中に右足首靱帯(じんたい)を損傷。木村の先発マウンドが多くなったが結局、甲子園出場はならなかった。だが木村は「今年は違いますよ」と断言する。確固たるエースの自覚が、チームの不安を吹き飛ばした。【三須一紀】