<高校野球佐賀大会>◇23日◇準々決勝

 がばい(とっても)すごかピッチャーたい!

 多久の宮島勇二投手(3年)がノーヒットノーランを達成した。126球を投げ9三振。許した走者は四球、三失、死球の3人だけと、神埼打線を封じ、2-0でチームを4年ぶりの4強に導いた。最速148キロのプロ注目左腕が、進化した投球を披露。25日の準決勝は、3試合連続コールド勝ち中の佐賀商打線に挑む。

 純朴な少年の表情が、マウンドに立つと一変する。9回裏2死二塁。宮島は三振を狙っていた。左腕から内角に143キロストレートをズバッ!

 ノーヒットノーランの快挙を決めると、拳を握りしめて絶叫した。「神埼は打線に力があるチーム。奇跡に近いです」。試合後は純朴な少年に戻っていた。

 6月のNHK杯伊万里農林戦で20三振を記録し、注目度を高めた。今大会も白石との初戦で12三振、鳥栖工との3回戦では延長11回で19三振を奪った。この日は代名詞の「K」連発ではなく、きっちり低めを突いて打たせていった。「三振はピンチの時に取れればいいんで」。意識が変わった進化の証しだった。

 1年時から140キロ台を出していたが粗削り。野口晃監督(38)は、宮島の将来的なプロ志望を受け「ただ140キロ出してもプロにはいけん。たくさんの人に見られて、重圧がかかった中で打たれないようになってプロにいける」と呪文(じゅもん)のように言い続けてきたという。以前はスピードガンの数字とだけ勝負していた。それが最後の夏に変わった。

 野口監督に「体重を増やさないと球は速くならん」と言われ、冬場に1日5~6食かき込んだ。その合間に約10キロの丸太を使った筋トレ。65キロだった体重が、最高で76キロに達した。最速も142キロから一気に6キロアップ。球速以上に球威が増した。女房役の馬場和之捕手(3年)は「冬場は軍手をはめないと痛くて捕れません」と腫れ上がった左手を見せて笑った。

 将来的にはプロ志望だが、卒業後にすぐかは「まだ分かりません」。今は初の甲子園だけを夢見る。準決勝は強打を誇る佐賀商。「佐賀商にも真っすぐで押して自分たちのリズムにしたい」。日焼けした顔をキリリと引き締めた。【実藤健一】