<高校野球埼玉大会>◇24日◇準々決勝

 春日部共栄に1-0で激戦を制した川越東のベンチに、主役の姿はない。14回で192球を投げ抜いたエース高梨雄平投手(3年)は治療中だった。

 延長14回、先頭打者として右前打を放ったが、左足をひきずりながらベンチに下がった。3球目を空振りした後、左ひざに痛みが走った。苦痛に顔をゆがめながら祈り、そして思いは通じた。試合後、サヨナラ安打を放った山田義和捕手(3年)にベンチ裏で「ありがとう」と声を掛け、一足早く球場を後にした。

 熱投の代償だった。今大会は2度目の先発。「みんなが(点を)取ってくれると信じて、全力で投げました」と、8安打10奪三振で完封。回を追うごとに球威が増し、10回以降は3安打に抑え、反撃を待った。

 記念大会だった98年の西埼玉大会で4強に進出したのが最高。ヤクルト、ロッテで活躍した阿井英二郎監督(45)が05年に就任して以来、着実に力をつけた。「相手の投手も良かったけれど、高梨がよく投げてくれた。1戦1戦大事にしたい」と、あと2勝に迫った思いを口にした。27日の準決勝は昨夏、昨秋、今春と3連敗中の花咲徳栄と対戦する。「この夏が4度目の正直。1点差で勝ちたい」と、リベンジを誓っていたエースの早い回復が待たれる。【保坂恭子】