<高校野球千葉大会>◇25日◇決勝

 “唐川2世”が1安打完封で夏の甲子園切符をつかんだ。成田・中川諒投手(3年)が東海大望洋を7回まで無安打に抑えるほぼ完ぺきな投球で1-0の勝利に導いた。成田は20年ぶり7度目の出場となる。中川はOBのロッテ唐川侑己投手(21)を手本にし、伸びのある直球にスライダー、チェンジアップという投球スタイル、球持ちのいいゆったりしたフォーム、抜群の制球力などはそっくり。本家の行けなかった夏の甲子園でも投げまくる。

 こん身の力を振り絞った。9回2死フルカウント。中川は外角低めに直球を投げ込んだ。バットが空を切った。「よっしゃあ!」。両足をがにまたに開き、両腕を突き上げて全身ガッツポーズをすると空に向かってほえた。マウンドに駆け寄ってきたチームメートと抱き合った。「最後は一番自信のある球で決めたかった」。ついに夏の甲子園切符を勝ち取った。

 気温35度のうなだるような暑さの中、気迫の111球で今春センバツ出場の東海大望洋を圧倒した。1回、2番加藤から空振り三振を奪って勢いに乗った。「オープンスタンスで大振りしてくる打者が多いから変化球でカウントを取った」という近藤智椰捕手(3年)のリードを信じて右腕を振った。4回無死に遊ゴロ失策で走者こそ許したが、7回まで無安打。ノーヒットノーランのムードが漂い始めた8回、先頭打者に詰まりながらも背走する二塁手のグラブの先に落とされた。快挙は逃したが、無四球1安打完封で投げ切った。

 「打たせて取る投球」がモットーだが、7試合で58得点の強力打線から11三振を奪った。しかもすべて空振り。尾島治信監督(41)から「最後の試合だから好きに投げろ」と言われて臨んだ決戦。最速は8回2死からの139キロだが、球速以上の伸びがあった。さらにスライダーが切れ、チェンジアップで幻惑した。築いた三振の山は6試合で61個にもなった。昨年12月、通常より100グラム重いボールで1日置きに50~60球投げ、肩のスタミナ面を強化したことが、2戦連投で計247球の熱投にもつながった。

 手本は同校OBのロッテ唐川。ゆっくりと左足を上げて、鋭く腕を振り切る。中学2年の時、センバツ1回戦(広陵戦)で投げる唐川を甲子園で見た。流れるような投球フォームに目を奪われた。「格好いい」と同校への進学を決意した。グラウンドへ練習を見学しに行くと、唐川から「サイン入りタオル」をもらった。今でも宝物として寮の部屋に飾っている。少しでも先輩に近づこうと毎晩、シャドーピッチングを繰り返してきた。

 最速は143キロだが、下半身で投げるように意識するようになり球持ちが良くなった。打者のより手前で球を離すことで、ボールが伸びる。制球力も増した。これも試合前の決まり事である高校時代の唐川の投球映像をDVDで確認し続けた結果。決勝前もチェックしてマウンドへ向かった。あこがれの唐川はスタンドから“2世”に熱い視線を送っていた。

 その唐川も行けなかった夏の甲子園に乗り込む。「千葉県代表として、全国制覇するだけです」。千葉県勢として75年習志野以来35年ぶりの頂点を目指す。【峯岸佑樹】