<高校野球愛知大会>◇26日◇準々決勝

 愛知啓成が夏3年連続となる東邦との“因縁”の戦いを6-3で制して、ベスト4に名乗りをあげた。「よっしゃ!」。6-3の9回1死一塁。東邦の最後のバッター9番島谷衛人(3年)を狙い通りの併殺打に打ち取ると、エース中川凱登(かいと)投手(3年)は、マウンド上で雄たけびをあげた。

 身長170センチと小柄。それがマウンドに立つと大きくたくましく見える。「自分が投げ切るしかない」と完投を心に誓っていた。したたかな計算も胸に秘めた。ベスト8から解禁したチェンジアップを立ち上がりから多投。3回に連打を浴び、4回以降は最速142キロのストレートを主体にして東邦打線を力でねじふせた。

 冬場は毎日20~30キロの走り込みで下半身と精神力を鍛えて来た。3回に逆転を許したときはベンチ内で選手だけのミーティング。「おれたちは、どこにも負けない練習をしてきたんだぞ。こんな所では負けられない」。主将の松井慎之助外野手(3年)を中心にした声に、中川も気合を入れ直した。

 一昨年は決勝で敗れた東邦に、昨夏の準々決勝、この日と2連勝。岡田敬三監督(46)は「1戦1戦勝って力をつけて来たのがウチの強み。守るべきものはなにもないので、開き直ってやります」と力強く言った。準決勝の相手、栄徳には春の練習試合で逆転負けしている。しかし、その時のチームとは違う。「どこにも負けない練習」を心の支えに悲願の甲子園に、また一歩近づく。【坂祐三】